ピートル.JP

開発の経緯

ピートル(一般名:スクロオキシ水酸化鉄)は、スイス ビフォーファーマ社が創製し、キッセイ薬品工業株式会社が日本で開発した経口投与の新規リン吸着薬です。本薬の有効成分であるスクロオキシ水酸化鉄は酸化水酸化鉄(Ⅲ)/スクロース/デンプン混合物であり、鉄を約20%含有する製剤です。

鉄化合物にリン吸着能があることは古くから知られていましたが、一般に酸化鉄(Ⅲ)(Fe2O3)のような脱水構造の酸化鉄は吸着能が低く、また、3価の鉄錯体は吸着能が高いものの溶解して消化管吸収されます。多核性の酸化水酸化鉄(Ⅲ)は、ほとんど溶解せず、経口リン吸着薬として有望な候補物質でしたが、吸着能が低下していく課題がありました。スクロオキシ水酸化鉄は、多核性の酸化水酸化鉄(Ⅲ)と炭水化物(スクロースおよびデンプン)からなる構造により、安定化され、長期間保管後も高いリン吸着能を維持することが可能となりました。一方、経口投与後は、構成成分であるスクロースおよびデンプンが、それぞれグルコースおよびフルクトース、マルトースおよびグルコースに消化されることで、多核性の酸化水酸化鉄(Ⅲ)を遊離します。多核性の酸化水酸化鉄(Ⅲ)の水酸基および水和水とリン酸イオンが配位子交換することによりリンが吸着されます。

海外では2009年から欧州および米国を中心に血液透析患者を対象とした海外第Ⅱ相臨床試験(PA-CL-03A)1)、2011年から透析患者を対象とした海外第Ⅲ相臨床試験(PA-CL-05AおよびPA-CL-05B)2,3)が実施されました。2019年11月現在、スクロオキシ水酸化鉄は米国および欧州等の計42ヵ国で承認を取得しており、米国、英国およびドイツ等においてはVELPHORO®の販売名で市販されています。

本邦では、キッセイ薬品工業株式会社が2015年9月に「透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症の改善」の効能・効果で本薬のチュアブル錠(販売名:ピートルチュアブル錠250mgおよび500mg)の承認を取得し、2015年11月より販売を開始しました。

本薬のチュアブル錠は、水なしまたは少量の水にて服用可能であり、水分摂取を制限されている透析患者にとって有用な薬剤です。しかし、2016年末の日本透析医学会の調査では透析患者全体の30%以上が75歳以上であり4)、咀嚼機能の低下により錠剤を噛み砕くことが困難な患者も存在することから、咀嚼せずに服用できる新規製剤の開発が望まれていました。そこで、直径2.3mmの粒状の咀嚼せずに服用できる顆粒剤を開発しました。既承認製剤であるチュアブル錠と新規製剤である顆粒剤の生物学的同等性が確認できたことから、ピートル顆粒分包の製造販売承認申請を行い、2018年9月に承認を取得しました。

参考文献

  1. 1)Wüthrich RP, et al.: Clin J Am Soc Nephrol. 2013; 8: 280-289.
  2. 2)Floege J, et al.: Kidney Int. 2014; 86: 638-647.
  3. 3)Floege J, et al.: Nephrol Dial Transplant. 2015; 30: 1037-1046.
  4. 4)日本透析医学会統計調査委員会:透析会誌. 2018; 51: 1-51.

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