いまさら聞けない透析の基礎知識
透析医療の基本知識についてお届けします。
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合併症② 腎性貧血
監修医師:鶴屋 和彦 先生 奈良県立医科大学 腎臓内科学
腎臓は、赤血球の造血を促すホルモン「エリスロポエチン(EPO)」を産生・分泌しています。腎臓で産生されたEPOは血流を介して骨髄へ到達し、赤芽球系幹細胞の分化を促します。腎機能が低下し、ヘモグロビン(Hb)の低下に見合った十分量のEPOが産生されなくなると、赤血球が不足して腎性貧血が起こります。腎性貧血の要因としては、血液中に尿毒素が増え、赤血球が造られにくくなる、赤血球の寿命の短縮、鉄代謝の障害、透析回路における残血や出血、栄養障害なども考えられますが、十分には明らかになっていません1)。 腎性貧血の程度をあらわす指標はHb値です。 診断基準、治療開始基準、治療目標値は下記のとおりですが、治療目標値は患者さん個々の状態に応じて設定されます。(以下、日本透析医学会「2015年版 慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」より抜粋)
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リン制限の説明のポイント
監修医師:小岩 文彦 先生 昭和大学藤が丘病院 内科系診療センター内科(腎臓)
リンは人体の電解質のうちカルシウムの次に多く、成人の場合は体重の約1%を占めます。その約85%が骨や歯に含まれ、残りの15 %は細胞膜や核酸の構成要素として体内の細胞に存在するほか、エネルギー産生に必要な物質の構成成分になっています 食物から摂取されたリンは約60%が吸収され、残りは便とともに排泄。吸収されたリンは、大半が尿から排泄されます。腎機能が低下するとリンの尿排泄が減るため、体内にリンがたまってしまいます。保存期腎不全から徐々に血中リン値が上昇しており、透析導入後も透析で除去できるリンの量は限られるため、透析患者さんは高リン血症になりやすいです。透析患者さんの管理目標値は透析前で3.5〜6.0mg/dLです4)(健常者の基準値は2.5〜4.7mg/dL)。