治療アルゴリズム
ANCA関連血管炎の治療アルゴリズム
- ・ANCA関連血管炎では、診断、臓器障害・病態の評価の後に治療が開始されます。
- ・ANCA関連血管炎の治療には「寛解導入治療(病気になって最初の数ヵ月で行う症状を軽減・消失させるための治療)と「寛解維持治療(症状が軽減・消失した後に病気が再燃しないために行う治療)があります。
- ・さらに、薬剤の中止(可能であれば)、再燃した場合の再寛解導入治療というステージに分けられます。
ANCA関連血管炎の治療アルゴリズム
- *:腎、肺(間質性肺炎・肺胞出血)、神経、頭頸部、皮膚の単一臓器に病変を認める。他臓器・筋骨格系の症状は伴わない。発熱・倦怠感などの臓器非特異的症状はあってもよい。
- ・白矢印():ANCA関連血管炎の診断および評価を示す
- ・実線():ANCA関連血管炎に対する治療が有効であった場合、および薬剤減量が成功した場合を示す。
- ・点線():各ステージにおける治療が無効、効果不十分、あるいは副作用により治療継続困難となり、再寛解導入治療が必要となる場合、または薬剤減量途中や中止後にANCA関連血管炎が再燃し再寛解導入治療が必要となる場合を示す。
難治性腎疾患に関する調査研究班 丸山彰一、びまん性肺疾患に関する調査研究班 本間 栄:
診断と治療社 ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017 px, 2017
CQ1(ANCA関連血管炎の寛解導入治療では、どのようなレジメンが有用か?)の推奨と解説(推奨①)
- ・ANCA関連血管炎の寛解導入治療では、「グルココルチコイド単独よりも、グルココルチコイド+静注シクロホスファミドパルスまたは経口シクロホスファミドを提案する」とされています。
- ・また、「グルココルチコイド+経口シクロホスファミドよりも、グルココルチコイド+静注シクロホスファミドパルスを提案する」とされています。
- ・なお、静注シクロホスファミドパルスの代替として経口シクロホスファミドを用いてもよいとされています。
CQ1の推奨と解説(推奨①)
CQ1 | ANCA関連血管炎の寛解導入治療では、どのようなレジメンが有用か? |
---|---|
CQ1-1 | ANCA関連血管炎の寛解導入治療では、グルココルチコイドとグルココルチコイド+経口シクロホスファミド(または静注シクロホスファミドパルス)のどちらが有用か? |
CQ1-2 | ANCA関連血管炎の寛解導入治療では、グルココルチコイド+経口シクロホスファミドとグルココルチコイド+静注シクロホスファミドパルスのどちらが有用か? |
推奨 | 推奨の強さ | エビデンスの確実性 | |
① | ANCA関連血管炎の寛解導入治療では、グルココルチコイド単独よりも、グルココルチコイド+静注シクロホスファミドパルスまたは経口シクロホスファミドを提案する。 | 弱い | 非常に低 |
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ANCA関連血管炎の寛解導入治療では、グルココルチコイド+経口シクロホスファミドよりも、グルココルチコイド+静注シクロホスファミドパルスを提案する。 | 弱い | 非常に低 | |
静注シクロホスファミドパルスの代替として経口シクロホスファミドを用いてもよい。 |
- 1)本推奨文でのANCA関連血管炎は、顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症を意味する。
- 2)急速進行性糸球体腎炎(RPGN)を含む重症な腎障害例は腎臓専門医に相談することが望ましい。
- 3)各薬剤を安全に使用するために、添付文書参照。
難治性腎疾患に関する調査研究班 丸山彰一、びまん性肺疾患に関する調査研究班 本間 栄:
診断と治療社 ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017 p16, 2017
CQ1(ANCA関連血管炎の寛解導入治療では、どのようなレジメンが有用か?)の推奨と解説(推奨②)
- ・ANCA関連血管炎の寛解導入治療では、「グルココルチコイド+リツキシマブよりも、グルココルチコイド+シクロホスファミドを提案する」とされています。
- ・なお、ANCA関連血管炎の治療に対して十分な知識・経験をもつ医師のもとで、リツキシマブの使用が適切と判断される症例においては、グルココルチコイド+シクロホスファミドの代替として、グルココルチコイド+リツキシマブを用いてもよいとされています。
CQ1の推奨と解説(推奨②)
CQ1 | ANCA関連血管炎の寛解導入治療では、どのようなレジメンが有用か? |
---|---|
CQ1-3 | ANCA関連血管炎の寛解導入治療では、グルココルチコイド+静注シクロホスファミドパルスとグルココルチコイド+リツキシマブのどちらが有用か? |
CQ1-4 | ANCA関連血管炎の寛解導入治療では、グルココルチコイド+経口シクロホスファミドとグルココルチコイド+リツキシマブのどちらが有用か? |
推奨 | 推奨の強さ | エビデンスの確実性 | |
② | ANCA関連血管炎の寛解導入治療では、グルココルチコイド+リツキシマブよりも、グルココルチコイド+シクロホスファミドを提案する。 | 弱い | 非常に低#1/低#2 |
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ANCA関連血管炎の治療に対して十分な知識・経験をもつ医師のもとで、リツキシマブの使用が適切と判断される症例においては、グルココルチコイド+シクロホスファミドの代替として、グルココルチコイド+リツキシマブを用いてもよい。 |
- #1:静注シクロホスファミドパルスとの比較
- #2:経口シクロホスファミドとの比較
- 1)本推奨文でのANCA関連血管炎は、顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症を意味する。
- 2)急速進行性糸球体腎炎(RPGN)を含む重症な腎障害例は腎臓専門医に相談することが望ましい。
- 3)各薬剤を安全に使用するために、添付文書参照。
難治性腎疾患に関する調査研究班 丸山彰一、びまん性肺疾患に関する調査研究班 本間 栄:
診断と治療社 ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017 p20, 2017
CQ1(ANCA関連血管炎の寛解導入治療では、どのようなレジメンが有用か?)の推奨と解説(推奨③)
- ・ANCA関連血管炎の寛解導入治療では、「シクロホスファミド、リツキシマブともに使用できない場合で、重症臓器病変がなく腎機能障害の軽微な場合には、グルココルチコイド+メトトレキサート*を提案する」とされています。
- ・また、「上記のグルココルチコイド+メトトレキサートの推奨内容に該当しない場合には、グルココルチコイド+ミコフェノール酸モフェチル*を提案する」とされています。
CQ1の推奨と解説(推奨③)
CQ1 | ANCA関連血管炎の寛解導入治療では、どのようなレジメンが有用か? |
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CQ1-5 | ANCA関連血管炎の寛解導入治療では、グルココルチコイド+経口シクロホスファミドとグルココルチコイド+メトトレキサートのどちらが有用か? |
CQ1-6 | ANCA関連血管炎の寛解導入治療では、グルココルチコイド+静注シクロホスファミドパルスとグルココルチコイド+ミコフェノール酸モフェチルのどちらが有用か? |
推奨 | 推奨の強さ | エビデンスの確実性 | |
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③ | シクロホスファミド、リツキシマブともに使用できない場合で、重症臓器病変がなく腎機能障害の軽微なANCA関連血管炎患者の寛解導入治療では、グルココルチコイド+メトトレキサート*を提案する。 | 弱い | 非常に低 |
④ | シクロホスファミド、リツキシマブともに使用できない場合で、上記推奨③に該当しない場合には、グルココルチコイド+ミコフェノール酸モフェチル*を提案する。 | 弱い | 非常に低 |
- *:保険適用外
- 1)本推奨文でのANCA関連血管炎は、顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症を意味する。
- 2)急速進行性糸球体腎炎(RPGN)を含む重症な腎障害例は腎臓専門医に相談することが望ましい。
- 3)各薬剤を安全に使用するために、添付文書参照。
難治性腎疾患に関する調査研究班 丸山彰一、びまん性肺疾患に関する調査研究班 本間 栄:
診断と治療社 ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017 p23, 2017
CQ2(重症な腎障害を伴うANCA関連血管炎の寛解導入治療で血漿交換は有用か?)の推奨と解説
- ・重症な腎障害を伴うANCA関連血管炎の寛解導入治療では、「グルココルチコイド+経口シクロホスファミド+グルココルチコイド大量静注療法よりも、グルココルチコイド+経口シクロホスファミド+血漿交換*を提案する」とされています。
- ・また、「グルココルチコイド+経口シクロホスファミドよりも、グルココルチコイド+経口シクロホスファミド+血漿交換*を提案する」とされています。
CQ2の推奨と解説
CQ2 | 重症な腎障害を伴うANCA関連血管炎の寛解導入治療で血漿交換は有用か? |
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CQ2-1 | 重症な腎障害を伴うANCA関連血管炎の寛解導入治療でグルココルチコイド+経口シクロホスファミドと併用するのは、グルココルチコイド大量静注療法と血漿交換のどちらが有用か? |
CQ2-2 | 重症な腎障害を伴うANCA関連血管炎の寛解導入治療でグルココルチコイド+経口シクロホスファミドとグルココルチコイド+経口シクロホスファミド+血漿交換のどちらが有用か? |
推奨 | 推奨の強さ | エビデンスの確実性 | |
① | 重症な腎障害を伴うANCA関連血管炎の寛解導入治療では、グルココルチコイド+経口シクロホスファミド+グルココルチコイド大量静注療法よりも、グルココルチコイド+経口シクロホスファミド+血漿交換*を提案する。 | 弱い | 非常に低 |
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重症な腎障害を伴うANCA関連血管炎の寛解導入治療では、グルココルチコイド+経口シクロホスファミドよりも、グルココルチコイド+経口シクロホスファミド+血漿交換*を提案する。 | 弱い | 非常に低 |
- *:保険適用外
- 1)本推奨文でのANCA関連血管炎は、顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症を意味する。
- 2)血漿交換の十分な経験がある医師のもとで治療すること。
- 3)急速進行性糸球体腎炎(RPGN)を含む重症な腎障害例は腎臓専門医に相談することが望ましい。
- 4)各薬剤を安全に使用するために、添付文書参照。
難治性腎疾患に関する調査研究班 丸山彰一、びまん性肺疾患に関する調査研究班 本間 栄:
診断と治療社 ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017 p26, 2017
CQ3(ANCA関連血管炎の寛解維持治療では、どのようなレジメンが有用か?)の推奨と解説
- ・ANCA関連血管炎の寛解維持治療では、「グルココルチコイドに加え、アザチオプリンを併用することを提案する」とされています。
- ・なお、寛解維持治療に用いる他の薬剤として、「リツキシマブ、メトトレキサート*、ミコフェノール酸モフェチル*が選択肢となりうる」と記載されています。
CQ3の推奨と解説
CQ3 | ANCA関連血管炎の寛解維持治療では、どのようなレジメンが有用か? |
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CQ3-1 | ANCA関連血管炎の寛解維持治療では、グルココルチコイド+経口シクロホスファミドとグルココルチコイド+アザチオプリンのどちらが有用か? |
CQ3-2 | ANCA関連血管炎の寛解維持治療では、グルココルチコイド+アザチオプリンとグルココルチコイド+リツキシマブのどちらが有用か? |
CQ3-3 | ANCA関連血管炎の寛解維持治療では、グルココルチコイド+アザチオプリンとグルココルチコイド+メトトレキサートのどちらが有用か? |
CQ3-4 | ANCA関連血管炎の寛解維持治療では、グルココルチコイド+アザチオプリンとグルココルチコイド+ミコフェノール酸モフェチルのどちらが有用か? |
CQ3-5 | ANCA関連血管炎の寛解維持治療では、グルココルチコイド+経口シクロホスファミドとグルココルチコイド+シクロスポリンAのどちらが有用か? |
推奨 | 推奨の強さ | エビデンスの確実性 | |
① | ANCA関連血管炎の寛解維持治療では、グルココルチコイドに加え、アザチオプリンを併用することを提案する。 | 弱い | 非常に低 |
---|---|---|---|
寛解維持治療に用いる他の薬剤として、リツキシマブ、メトトレキサート*、ミコフェノール酸モフェチル*が選択肢となりうる。 |
- *:保険適用外
- 1)本推奨文でのANCA関連血管炎は、顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症を意味する。
- 2)各薬剤を安全に使用するために、添付文書参照。
難治性腎疾患に関する調査研究班 丸山彰一、びまん性肺疾患に関する調査研究班 本間 栄:
診断と治療社 ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017 p29, 2017