KISSEI

ANCA関連血管炎の治療指針 ~診断~

鑑別診断

厚生労働省の顕微鏡的多発血管炎(MPA)の診断基準

  • ・MPAの診断は厚生労働省のMPAの診断基準に準じ、主要症候、主要組織所見、主要検査所見から総合的に行います。
  • ・厚生労働省の多発血管炎性肉芽腫症(GPA)の診断基準にも合致するANCA関連血管炎患者が少なからず存在することから、CHCC2012分類及び米国リウマチ学会(ACR)のGPA分類基準も参考にして、GPAなどの他の血管炎や類似疾患を除外した後に診断します。
【参考】厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)難治性血管炎に関する調査研究班 有村義宏、
難治性腎疾患に関する調査研究班 丸山彰一、びまん性肺疾患に関する調査研究班 本間 栄:
診断と治療社 ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017 p79-80, 2017

厚生労働省のMPAの診断基準

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主要項目
(1)主要症候
  • ①急速進行性糸球体腎炎
  • ②肺出血、もしくは間質性肺炎
  • ③腎・肺以外の臓器症状:紫斑、皮下出血、消化管出血、多発性単神経炎など
(2)主要組織所見 細動脈・毛細血管・後毛細血管細静脈の壊死、血管周囲の炎症性細胞浸潤
(3)主要検査所見
  • ①MPO-ANCA陽性
  • ②CRP陽性
  • ③蛋白尿・血尿、BUN、血清クレアチニンの上昇
  • ④胸部X線所見:浸潤影(肺胞出血)、間質性肺炎
(4)判定
  • ①確実(definite)
    • (a)主要症候の2項目以上を満たし、組織所見が陽性の例
    • (b)主要症候の①及び②を含め2項目以上を満たし、MPO-ANCAが陽性の例
  • ②疑い(probable)
    • (a)主要症候の3項目以上を満たす例
    • (b)主要症候の1項目とMPO-ANCA陽性の例
(5)鑑別診断
  • ①結節性多発動脈炎
  • ②多発血管炎性肉芽腫症(旧Wegener肉芽腫症)
  • ③好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(旧Churg‐Strauss症候群)
  • ④川崎動脈炎
  • ⑤膠原病(全身性エリテマトーデス、関節リウマチなど)
  • ⑥IgA血管炎(旧紫斑病血管炎)

参考事項

  • (1)主要症候の出現する1~2週間前に先行感染(多くは上気道感染)を認める例が多い。
  • (2)主要症候①、②は約半数例で同時に、その他の例ではいずれか一方が先行する。
  • (3)多くの例でMPO-ANCAの力価は疾患活動性と平行して変動する。
  • (4)治療を早く中止すると、再発する例がある。
  • (5)除外項目の諸疾患は壊死性血管炎を呈するが、特徴的な症候と検査項目から鑑別できる。

MPO:ミエロペルオキシダーゼ

【参考】厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)難治性血管炎に関する調査研究班 有村義宏、
難治性腎疾患に関する調査研究班 丸山彰一、びまん性肺疾患に関する調査研究班 本間 栄:
診断と治療社 ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017 p79, 2017
厚生省自己免疫疾患調査研究班・難治性血管炎分科会, 1998

厚生労働省の多発血管炎性肉芽腫症(GPA)の診断基準

  • ・GPAの診断は厚生労働省による診断基準及び米国リウマチ学会(ACR)分類基準により行いますが、加えてWattsらの原発性全身性血管炎分類アルゴリズムもANCA関連血管炎が疑われる症例からGPAを抽出するのに有用です。
  • ・厚生労働省のGPAの診断基準においては、顕微鏡的多発血管炎(MPA)と同様、組織所見がなくとも、上気道、肺、腎の3主要臓器症状が揃えばGPAと診断できるようになっている点が特徴です。
【参考】厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)難治性血管炎に関する調査研究班 有村義宏、
難治性腎疾患に関する調査研究班 丸山彰一、びまん性肺疾患に関する調査研究班 本間 栄:
診断と治療社 ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017 p80-84, 2017

厚生労働省のGPAの診断基準

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主要項目
(1)主要症状
  • ①上気道(E)の症状
    • E:鼻(膿性鼻漏・出血・鞍鼻)・眼(眼痛・視力低下・眼球突出)・耳(中耳炎)、口腔・咽頭痛(潰瘍・嗄声・気道閉塞)
  • ②肺(L)の症状
    • L:血痰・咳嗽・呼吸困難
  • ③腎(K)の症状
    • 血尿・蛋白尿・急速に進行する腎不全・浮腫・高血圧
  • ④血管炎による症状
    • (a)全身症状:発熱(38℃以上、2週間以上)、体重減少(6ヵ月以内に6kg以上)
    • (b)臓器症状:紫斑、多関節炎(痛)、上強膜炎、多発性神経炎、虚血性心疾患(狭心症・心筋梗塞)、消化管出血(吐血・下血)、胸膜炎
(2)主要組織所見
  • ①E、L、Kの巨細胞を伴う壊死性肉芽腫性炎
  • ②免疫グロブリン沈着を伴わない壊死性半月体形成腎炎
  • ③小細動脈の壊死性肉芽腫性血管炎
(3)主要検査所見
  • ①Proteinase-3(PR3)-ANCA(蛍光抗体法でcytoplasmic pattern、C-ANCA)が高率に陽性を示す
(4)判定
  • ①確実(definite)
    • (a)上気道(E)、肺(L)、腎(K)のそれぞれ1臓器症状を含め主要症状の3項目以上を示す例
    • (b)上気道(E)、肺(L)、腎(K)、血管炎による主要症状の2項目以上および、組織所見①、②、③の1項目以上を示す例
    • (c)上気道(E)、肺(L)、腎(K)、血管炎による主要症状の1項目以上と組織所見①、②、③の1項目以上およびC(PR3)-ANCA陽性の例
  • ②疑い(probable)
    • (a)上気道(E)、肺(L)、腎(K)、血管炎による主要症状のうち2項目以上の症状を示す例
    • (b)上気道(E)、肺(L)、腎(K)、血管炎による主要症状のいずれか1項目および、組織所見①、②、③の1項目を示す例
    • (c)上気道(E)、肺(L)、腎(K)、血管炎による主要症状のいずれか1項目とC(PR3)-ANCA陽性を示す例
(5)参考となる検査所見
  • ①白血球、CRPの上昇
  • ②BUN、血清クレアチニンの上昇
(6)鑑別診断
  • ①上気道(E)、肺(L)の他の原因による肉芽腫性疾患(サルコイドーシスなど)
  • ②他の血管炎症候群(顕微鏡的多発血管炎、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(Churg-Strauss症候群)、結節性多発動脈炎など)

参考事項

  • (1)上気道(E)、肺(L)、腎(K)のすべてがそろっている例は全身型、上気道(E)、下気道(L)、のうち単数もしくは二つの臓器にとどまる例を限局型とよぶ。
  • (2)全身型はE、L、Kの順に症状が発現することが多い。
  • (3)発症後しばらくすると、E、Lの病変に黄色ブドウ球菌を主とする感染症を合併しやすい。
  • (4)E、Lの肉芽腫による占拠性病変の診断にCT、MRI、シンチ検査が有用である。
  • (5)PR3-ANCAの力価は疾患活動性と平行しやすい。まれにP(MPO)-ANCA陽性を認める例もある。
【参考】厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)難治性血管炎に関する調査研究班 有村義宏、
難治性腎疾患に関する調査研究班 丸山彰一、びまん性肺疾患に関する調査研究班 本間 栄:
診断と治療社 ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017 p83, 2017
吉田雅治ほか:厚生省特定疾患免疫疾患調査研究班 難治性血管炎分科会 平成10年度報告書 239-246, 1999

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