病因
遺伝的素因
- ・ANCA関連血管炎の有病率には集団差が存在し、日本人を含む東アジア集団では顕微鏡的多発血管炎(MPA)及びミエロペルオキシダーゼ(MPO)-ANCA陽性が多いとされています。
- ・各集団には遺伝的背景の違いが存在し、最も確立した遺伝因子はヒト白血球抗原(HLA)遺伝子です。
- ・ゲノムワイド関連解析(GWAS)においても、HLAが位置する主要組織適合遺伝子複合体(MHC)領域に最も強い関連が検出されており、日本におけるMPAの疾患感受性アリルはHLA-DRB1*09:01です。
難治性腎疾患に関する調査研究班 丸山彰一、びまん性肺疾患に関する調査研究班 本間 栄:
診断と治療社 ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017 p61-64, 2017
ANCA関連血管炎の有病率の集団差と遺伝的素因(HLA)の関連
- GPA:多発血管炎性肉芽腫症 MPA:顕微鏡的多発血管炎
- PR3:プロテイナーゼ3 MPO:ミエロペルオキシダーゼ
環境要因
- ・ANCA関連血管炎のリスクを高める環境要因には、薬剤、感染、粉塵曝露などがあります。
- ・薬剤では、抗甲状腺薬のプロピルチオウラシルによる発現頻度が比較的高く、特に重要です。
- ・感染では、鼻腔での黄色ブドウ球菌の保菌が多発血管炎性肉芽腫症(GPA)再燃リスクの上昇と関連するとされています。
- ・粉塵曝露では、結晶性シリカへの曝露がリスクを高めるとされています。
難治性腎疾患に関する調査研究班 丸山彰一、びまん性肺疾患に関する調査研究班 本間 栄:
診断と治療社 ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017 p64-65, 2017
ANCA関連血管炎のリスクを高める環境要因
薬剤 | プロピルチオウラシル(抗甲状腺薬)、 ヒドララジン(降圧薬)、ミノサイクリン(抗菌薬)、コカインなど | |
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ANCA関連血管炎を誘発することがある。 機序:好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps:NETs)に異常をもたらすことで、ANCA産生を誘導すると考えられている。 |
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感染 | 鼻腔での黄色ブドウ球菌の保菌 | |
GPA再燃リスクの上昇と関連し、ST合剤(治療薬)は同リスクの低下と関連する。 機序:黄色ブドウ球菌はPR3をコードする遺伝子に相補的な塩基配列を保有しており、その翻訳産物がまず相補的PR3に対する抗体産生を誘導し、その抗体に対する抗イディオタイプ抗体がPR3-ANCAであるという仮説がある。 |
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粉塵曝露 | 結晶性シリカへの曝露 | |
ANCA関連血管炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチなど、自己免疫疾患のリスクを高める。メタ解析では結晶性シリカへの曝露とANCA関連血管炎の関連は、オッズ比2.6(95%CI:1.5-4.4)であった。 | ||
日本では阪神淡路大震災と東日本大震災の後の数年間、被災地でANCA関連血管炎患者数の増加が観察されており、環境化学物質への曝露がANCA関連血管炎発症の誘因になることを示唆している。 |