検査所見
尿検査
- ・全身症状や耳鼻咽喉科症状、呼吸器症状などで受診し、ANCA関連血管炎を疑った場合、尿検査を実施します。
- ・血蛋白尿[試験紙法で血尿(1+)以上かつ蛋白尿(1+)以上]や円柱尿があり、腎機能が正常であっても原因不明の炎症所見を伴う場合や原因不明の腎機能障害[推算糸球体濾過量(eGFR)<60mL/min/1.73m2]を認める場合は、急速進行性腎炎症候群を疑いANCA測定や専門医への紹介が推奨されます。
- ・ANCA関連血管炎に伴う糸球体腎炎では、血尿は通常肉眼的血尿ではなく、蛋白尿はネフローゼレベルに至ることは稀です。
- ・「10%を超える変形赤血球または赤血球円柱を伴う血尿」、「検尿検査で2+以上の血尿と蛋白尿」の所見は、生検による腎血管炎(糸球体腎炎)の代用マーカーとされています。
難治性腎疾患に関する調査研究班 丸山彰一、びまん性肺疾患に関する調査研究班 本間 栄:
診断と治療社 ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017 p74-77, 2017
血液検査(血算、生化学、血清学的検査)
- ・ANCA関連血管炎では、「白血球増多」、「正球性正色素性貧血」、「血小板増多」、「赤血球沈降速度亢進」、「C反応性タンパク(CRP)上昇」を認めますが、これらが正常であってもANCA関連血管炎を否定することはできません。
- ・血清クレアチニンの上昇は、腎予後及び生命予後の不良因子です。
- ・抗核抗体、血清補体価、C3、C4、クリオグロブリン、B型・C型肝炎ウイルス抗原・抗体検査、抗ヒト免疫不全ウイルス抗体検査、結核特異的インターフェロン-γ遊離試験、血液培養などは、炎症による全身症状を呈する他の疾患との鑑別に有用です。
難治性腎疾患に関する調査研究班 丸山彰一、びまん性肺疾患に関する調査研究班 本間 栄:
診断と治療社 ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017 p74-77, 2017
ANCA検査
- ・ANCAの測定にはperinuclear ANCA(p-ANCA)やcytoplasmic ANCA(c-ANCA)として定性的な同定を行う間接蛍光抗体法(IIF)と、ミエロペルオキシダーゼ(MPO)-ANCAやプロテイナーゼ(PR)3-ANCAとして抗原特異的で定量的な測定が行える酵素免疫測定法(EIA)があります。
- ・IIFでp-ANCAパターンを示す場合の主な対応抗原はMPO-ANCA、c-ANCAパターンの主な対応抗原はPR3-ANCAですが、その逆となる場合もあります。
- ・ANCAの検査法として、MPO-ANCA、PR3-ANCAのEIA及び蛍光免疫染色によるANCA同定の3つの検査法が保険収載されています。
- ・ANCA陽性であった場合、ANCA関連血管炎の可能性は高まりますが、ANCA関連血管炎と酷似した症候を呈する疾患もあるため適切な鑑別が必要となります。
難治性腎疾患に関する調査研究班 丸山彰一、びまん性肺疾患に関する調査研究班 本間 栄:
診断と治療社 ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017 p53-57, p74-77, 2017
胸部単純X線・CT検査
- ・ANCA関連血管炎が疑われる患者では、胸部単純X線のみならず高分解能CT(HRCT)検査を実施します。
- ・顕微鏡的多発血管炎(MPA)では間質性肺炎やびまん性肺胞出血を呈しますが、間質性肺炎では網状影が気管支血管束近傍や胸膜直下にみられ、経過とともに蜂巣肺所見である輪状影を伴います。
- ・びまん性肺胞出血は斑状のすりガラス陰影(GGO)として捉えられますが、重度の出血では浸潤影を呈します。
難治性腎疾患に関する調査研究班 丸山彰一、びまん性肺疾患に関する調査研究班 本間 栄:
診断と治療社 ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017 p74-77, 2017
生検
- ・血管炎診断のプロセスにおいて、症候から血管炎をきたしていると考えられる臓器や部位の組織学的検査(生検)は、血管炎の組織学的確証を得る上で極めて有用な検査です。
- ・生検は臨床所見から鑑別診断を十分に行い、診断に適切な部位を選択した上で行う必要があります。
- ・ANCA関連血管炎は、小動脈から毛細血管、細動脈までの壊死性血管炎がみられますが、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)や好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)では肉芽腫性病変がみられ、EGPAでは高度の好酸球浸潤が特徴的です。
- ・一方、MPAでは肉芽腫性病変はみられず、通常、好酸球浸潤も認められません。
難治性腎疾患に関する調査研究班 丸山彰一、びまん性肺疾患に関する調査研究班 本間 栄:
診断と治療社 ANCA関連血管炎診療ガイドライン2017 p74-77, 2017