診断
検査(血液検査、骨髄検査、免疫学的検査、その他、保険適用外の検査など)
ITPに対する疾患特異的な検査が確立されていないため、ITPの診断は基本的に除外診断です。
血液や骨髄検査のほか、保険適用外のGPIIb/IIIa(もしくはGPIb/IX)に対する自己抗体や網状血小板比率(RP%)および血漿トロンボポエチン(TPO)濃度も診断に有用な可能性があります。
ITP診断に参考となる検査
検査の種類 | 概要 |
---|---|
血液検査(末梢血) | 血算とともに末梢血塗抹標本の観察を丁寧に行う。 |
骨髄検査 | 白血病や骨髄異形成症候群(MDS)、骨髄低形成による血小板減少を除外するために重要な検査。ITPに特異的な所見はなく必須ではない。 |
診断に有用な可能性があるものの保険適用外の検査 | |
GPIIb/IIIa (もしくはGPIb/IX) に対する自己抗体 |
GPIIb/IIIaあるいはGPIb/IXに対する自己抗体検出あるいはGPIIb/IIIa反応性B細胞の検出(ELISPOT法)。検査可能な研究施設は限られる。 |
RP% | 網状血小板比率(RP%)は幼若な血小板の割合を示す。 |
IPF% | 自動血球測定装置で測定される幼若血小板分画比率(IPF%)もRP%と同等の有用性がある。 |
血漿(血清) TPO濃度 |
血漿TPO濃度は、骨髄低形成による血小板減少との鑑別に有用。これらの検査は、再生不良性貧血などの低形成性血小板減少との鑑別に有用な可能性がある。 |
診断の基準
2004年に提唱された試案では、慢性ITPの診断基準は、下記の4項目を満たすことです。
ただし、4項目を満たしてもITPとして非典型的な所見を認める場合は骨髄検査を行うことが望ましいとされています。
血液凝固異常症に関する調査研究班の試案
血小板減少:10万/μL以下
末梢血塗抹標本:3系統すべてに明らかな形態異常を認めない
ほかの免疫性血小板減少性紫斑病を除外できること
- ・全身性エリテマトーデス(SLE)
- ・リンパ増殖性疾患
- ・HIV感染症
- ・肝硬変
- ・薬剤性 など
以下の検査のうち3)、 4)、 5)のいずれかを含む3項目以上を満たすこと
- 1)貧血がない
- 2)白血球減少がない
- 3)末梢血中の抗GPIIb/IIIa抗体産生、B細胞の増加
- 4)血小板関連抗GPIIb/IIIa抗体の増加
- 5)網状血小板比率の増加
- 6)血漿トロンボポエチン(TPO)は軽度上昇にとどまる(<300 pg/mL)
鑑別すべき疾患
ITPの診断は除外診断であり、血小板減少をきたす疾患全般と鑑別する必要があります。
血小板減少をきたすほかの疾患
- ・薬剤または放射線障害
- ・再生不良性貧血
- ・骨髄異形成症候群(MDS)
- ・発作性夜間血色素尿症(PNH)
- ・全身性エリテマトーデス(SLE)
- ・白血病
- ・悪性リンパ腫
- ・骨髄癌転移
- ・播種性血管内凝固(DIC)
- ・血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)
- ・脾機能亢進症
- ・巨赤芽球性貧血
- ・敗血症
- ・結核症
- ・サルコイドーシス
- ・血管腫
- ・Bernard-Soulier(ベルナール・スーリエ)症候群※
- ・Wiskott-Aldrich(ウィスコット・オルドリッチ)症候群※
- ・May-Hegglin(メイ・ヘグリン)症候群※
- ・Kasabach-Merritt(カサバッハ・メリット)症候群※ など
- ※:先天性血小板減少症
ITPに含まれる疾患
感染症
- ・小児のウイルス性感染症後に生じた血小板減少
- ・小児のウイルス生ワクチン接種後に生じた血小板減少
朝倉英策ほか:臨床に直結する血栓止血学 改訂2版, p158-159, 中外医学社, 2020