いまさら聞けない透析の基礎知識

いまさら聞けない透析の基礎知識

透析医療の基本知識についてお届けします。

  • 合併症② 腎性貧血

    監修医師:鶴屋 和彦 先生 奈良県立医科大学 腎臓内科学

    腎臓は、赤血球の造血を促すホルモン「エリスロポエチン(EPO)」を産生・分泌しています。腎臓で産生されたEPOは血流を介して骨髄へ到達し、赤芽球系幹細胞の分化を促します。腎機能が低下し、ヘモグロビン(Hb)の低下に見合った十分量のEPOが産生されなくなると、赤血球が不足して腎性貧血が起こります。腎性貧血の要因としては、血液中に尿毒素が増え、赤血球が造られにくくなる、赤血球の寿命の短縮、鉄代謝の障害、透析回路における残血や出血、栄養障害なども考えられますが、十分には明らかになっていません1)。 腎性貧血の程度をあらわす指標はHb値です。 診断基準、治療開始基準、治療目標値は下記のとおりですが、治療目標値は患者さん個々の状態に応じて設定されます。(以下、日本透析医学会「2015年版 慢性腎臓病患者における腎性貧血治療のガイドライン」より抜粋)

  • 合併症① 心不全

    監修医師:鶴屋 和彦 先生 奈良県立医科大学 腎臓内科学

    透析患者さんはさまざまな合併症リスクを抱えていますが、なかでも心血管疾患は生命予後に関わる重要な合併症です。透析患者さんの死亡原因の2位は「心不全」(21.0%)で、5位の「脳血管障害」(5.4%)と6位の「心筋梗塞」(3.3%)を合わせると、約3割を心血管疾患が占めています(日本透析医学会「図説 わが国の慢性透析療法の現況[2022年12月31日現在]」)1)。

  • シャントトラブル⑤ 静脈高血圧、動静脈瘤

    監修医師:小林 広学 先生 旭川赤十字病院 腎臓内科

    シャントは患者さんの命綱ともいうことができます。長い透析生活の中でシャントのトラブルをできるだけ減らすことが、良好な予後やQOL の向上につながります。 今回は、静脈高血圧症、動静脈瘤について解説します。

  • シャントトラブル④ 感染

    監修医師:小林 広学 先生 旭川赤十字病院 腎臓内科

    シャント部が細菌などに感染すると、シャントの寿命が短くなってしまいます。感染リスクが最も高いのは長期留置カテーテル、次に人工血管内シャント(AVG)、自己血管内シャント(AVF)とされています1)。また、長期留置カテーテルやAVGの感染は難治性になりやすいため、とくに注意が必要です。

  • シャントトラブル③ 過剰血流

    監修医師:小林 広学 先生 旭川赤十字病院 腎臓内科

    シャント血液量が増え、循環動態の許容範囲を超える場合を過剰血流といいます。過剰血流を判断する基準値は、患者さんの状態にもよるため厳密なものはありませんが、一般的にシャント血流量が1,500〜2,000mL/分以上、もしくはシャント血流量を心拍出量で割ったFlow/COが30〜35%以上になると、循環器に過剰な負担がかかります。

  • シャントトラブル② スチール症候群

    監修医師:小林 広学 先生 旭川赤十字病院 腎臓内科

    スチール症候群とは、本来は末梢に供給される動脈血がシャント(アクセス静脈)に流入することによって起こる末梢循環障害・虚血症状で、手指に冷感やしびれ、疼痛などが現れます。発生リスクが高いのは、高齢者のほか、糖尿病や全身性エリテマトーデス(SLE)などのためにもともと末梢循環障害を持っている患者さん、末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)を合併している患者さん、頻回のシャント造設手術により末梢動脈の血流量が低下している患者さんなどです。

  • シャントトラブル① シャント血管の狭窄・閉塞

    監修医師:小林 広学 先生 旭川赤十字病院 腎臓内科

    適正な透析を行う上でとても大切なシャントですが、さまざまな理由でトラブルが起こることがあります。とくに起こりやすいトラブルは、シャント血管の狭窄や閉塞、静脈高血圧、スチール症候群、動静脈瘤、過剰血流です。 今回は、発生頻度の高い狭窄と閉塞について解説します。

  • 透析患者さんの熱中症予防対策

    監修医師:小岩 文彦 先生 昭和大学藤が丘病院 内科系診療センター内科(腎臓)

    一般的な熱中症対策は、水分をこまめに摂る、塩分を適度に摂取するなどですが、透析患者さんにそのままあてはめることはできません。また、尿毒素の影響で自律神経が障害されやすい透析患者さんは、体温調節機能がうまく働かずに暑くても発汗が起こりにくく体内に熱がこもりやすい、体液量・電解質のバランスが崩れやすいといった特徴があるため、より慎重な熱中症対策が求められます。

  • リン制限の説明のポイント

    監修医師:小岩 文彦 先生 昭和大学藤が丘病院 内科系診療センター内科(腎臓)

    リンは人体の電解質のうちカルシウムの次に多く、成人の場合は体重の約1%を占めます。その約85%が骨や歯に含まれ、残りの15 %は細胞膜や核酸の構成要素として体内の細胞に存在するほか、エネルギー産生に必要な物質の構成成分になっています 食物から摂取されたリンは約60%が吸収され、残りは便とともに排泄。吸収されたリンは、大半が尿から排泄されます。腎機能が低下するとリンの尿排泄が減るため、体内にリンがたまってしまいます。保存期腎不全から徐々に血中リン値が上昇しており、透析導入後も透析で除去できるリンの量は限られるため、透析患者さんは高リン血症になりやすいです。透析患者さんの管理目標値は透析前で3.5〜6.0mg/dLです4)(健常者の基準値は2.5〜4.7mg/dL)。

  • 透析患者はサルコペニア・フレイルのリスクが高い!

    監修医師:小岩 文彦 先生 昭和大学藤が丘病院 内科系診療センター内科(腎臓)

    近年は、高齢者こそ良質なたんぱく質をしっかり摂ることが推奨されています。骨格筋量が減少していくサルコペニアや、心身が衰え虚弱化するフレイルを予防するためですが、透析患者さんもこれらの予防が重要です。透析患者さんは保存期のたんぱく質制限によって栄養障害を発症するリスクがあり、血液透析療法開始後は毎回の透析療法によって栄養素が失われることもあり、一般高齢者のサルコペニア有病率が6〜12%

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