【いまさら聞けない透析の基礎知識】 透析患者さんの熱中症予防対策 監修:昭和大学藤が丘病院 内科系診療センター 内科(腎臓) 教授 小岩 文彦 先生

暑さに負けない「体づくり」と基本的対策

⼀般的な熱中症対策は、⽔分をこまめに摂る、塩分を適度に摂取するなどですが、透析患者さんにそのままあてはめることはできません。また、尿毒素の影響で⾃律神経が障害されやすい透析患者さんは、体温調節機能がうまく働かずに暑くても発汗が起こりにくく体内に熱がこもりやすい、体液量・電解質のバランスが崩れやすいといった特徴があるため、より慎重な熱中症対策が求められます。

基本となるのは、暑さに負けない「体づくり」です。⾷事療法や規則正しい睡眠、適度な運動を⼼がけ、基礎体⼒をつけることによって熱中症になりにくい体をつくることができます。服装は綿や⿇など通気性のよいもの、下着は吸⽔性・速乾性のすぐれた素材を選んでもらいましょう。紫外線対策などのために⻑袖を着る場合は、薄⼿の⽣地を選ぶなどして熱がこもらないような注意が必要です

また、脇の下や⾸まわり、太ももの内側を冷やすと体温が下がりやすいことを伝え、冷却グッズを持ち歩いたり、急ぐときは冷たいペットボトルを当てたりすることを勧めましょう。扇⼦や団扇、ハンディ扇⾵機なども利⽤を。

それでも汗をたくさんかいてしまったときは、汗によって体重が減少した分を補うようなイメージで⽔分を摂るように指導します。ポイントは、⽔や⻨茶を少しずつ、ゆっくり飲むこと。飲み過ぎを防ぐためには、うがいで⼝をうるおしたり、氷を⼀個舐めたりする⼯夫が有効です。

汗をかきやすい時期は、可能なら毎⽇体重を測って記録し、⽔分摂取の調節に役⽴てると体重の変化を最⼩限におさえることができ、体調の維持につながります。体重がドライウエイトを下回った時にはすみやかに⽔分補給をすることにより、脱⽔によるシャント閉塞のリスクも低下させます。また、汗をかくと⾎圧が下がることがあるため、⾎圧は毎⽇測定・記録することを勧めましょう。

暑さを避けるためにグッズや情報を活⽤

熱中症の予防でもう1つ重要なのは、暑い環境を避けることです。まず、暑い中屋外で運動することや、炎天下での活動は避けてもらいましょう。屋外の運動は早朝や夜間など涼しい時間帯に⾏い、できれば運動は屋内でするように勧めます。⽇中外出するときは、帽⼦、サングラス、⽇傘で暑さや紫外線をガード。紫外線は⽪膚や眼にダメージを与えるだけでなく、体を疲労させ、免疫機能の低下も招くため、紫外線の多い時期はその対策も必要です。最近は、ラッシュガードと呼ばれる薄⼿で速乾性のある⻑袖のマリンスポーツウエアが⽇常着としても使われるようになっていますが、このような機能性ウエアを利⽤するのも⼀案です。

屋内で過ごすときも、室内の温度や湿度をチェック。エアコンはもちろんのこと、扇⾵機や送⾵機を併⽤して快適に過ごせる環境を保つようにします。もっとも過ごしやすいのは室温28℃程度、湿度60%程度といわれていますが、体感だけで判断するのではなく、温度計・湿度計を部屋に置いてきちんと調節することが室内での熱中症防⽌につながります。節電も⼤切ですが、健康と命を守ることが最優先です。

気温や湿度の影響を受けやすい透析患者さんには、天気予報で気温や湿度、暑さ指数を確認する習慣をつけてもらいましょう。暑さ指数は「注意」「警戒」「厳重警戒」「危険」の4段階であらわされ、暑さ指数が28を超えると熱中症患者が急増します。2021年からは、暑さ指数33を超えると、全国を対象に「熱中症警戒アラート」が発表されるようになりました。

もし、気温や湿度が⾼い環境の中でめまい、気分不快、⽴ちくらみやぐったりするなどの熱中症の症状があらわれた場合は、まず涼しい場所に移動して⾐服をゆるめ、冷却グッズや濡れタオルを当ててあおいで体を冷やすなどの対応を⾏い、頭痛や吐き気、筋⾁のけいれんなどの症状を認めた場合には、透析⽇以外でも透析で通院している医療機関に相談するように指導しましょう。

<参考>

「透析新ライフ」の「熱中症にならないためのチェックリスト」をもとにしています。
https://www.kissei.co.jp/dialysis/selfcheck/04.html

イラスト

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