薬効薬理

1.作用機序

(1)DPP-4阻害作用20)

オマリグリプチンは、インクレチン(GLP-1およびGIP)を分解する酵素であるDPP-4を阻害することによって、活性型インクレチン濃度を上昇させ、血糖依存的にインスリン分泌促進作用およびグルカゴン分泌抑制作用を増強して血糖コントロールを改善します。

DPP-4阻害作用の画像

20)Greg L Plosker. Drugs. 2014 Feb ; 74(2): 223-242
COI:本試験はMSD株式会社の資金により実施された。

(2)長時間作用するメカニズム4、14、15、18)

オマリグリプチンの肝臓による代謝は糞中の総放射能排泄率3.36%であり、未変化体として体内に分布します。そのため投与1時間後には血漿や副腎、横隔膜など、全身の組織でオマリグリプチン由来の放射能が最高濃度に到達します。腎糸球体で濾過されたのち、大部分が尿細管で受動的に再吸収され、体内循環を繰り返します。

長時間作用するメカニズムの画像

4)P005 日本人健康被験者を対象とした用量漸増単回及び反復投与試験
14)MK-3102のマスバランス試験
15)ラットにおける組織分布
18)P002 健康成人における反復投与試験

2.臨床薬理試験

(1)DPP-4阻害作用(海外データ)4)

健康成人6例に、オマリグリプチン25mgを週1回3週間反復経口投与した結果、オマリグリプチン投与3回目の投与7日後のDPP-4阻害率(最小二乗平均値、ベースラインで補正)は88%でした。

■ 健康成人における反復経口投与後のDPP-4阻害率の推移 オマリグリプチン25mg/週 群のみ記載
DPP-4阻害作用(海外データ)の画像

4)P005 日本人健康被験者を対象とした用量漸増単回及び反復投与試験

海外在住日本人健康成人男性6例
オマリグリプチン1~50mgを週1回3週間反復経口投与した。
高血漿中濃度による分析(蛍光法)及び低血漿中濃度による分析(吸光光度法)によりDPP-4阻害率を測定。ベースラインを第1日の治験薬投与前の値とし、処置と投与日の交互作用を固定効果、被験者を変量効果とする線形混合効果モデルを用いて解析した。

(2)活性型GLP-1濃度に及ぼす影響(海外データ)18)

健康成人6例に、オマリグリプチン25mgを週1回3週間反復経口投与しました。3回目投与(15日目)の投与10時間後に食事を摂取し、食後2時間における血漿中活性型GLP-1濃度を測定した結果、ベースライン時からの加重平均値の増加〔幾何平均値[95%信頼区間]〕は、オマリグリプチン25mg/週 群では3.07[2.40、3.92]、プラセボ群では1.50[1.21、1.85]でした。プラセボとの幾何平均比[90%信頼区間]は2.05[1.57、2.67]であり、90%信頼区間の下限は1を上回りました。

■ 血漿中活性型GLP-1濃度の変化量(3回目投与10時間後におけるテストミール負荷試験)
活性型GLP-1濃度に及ぼす影響(海外データ)の画像

18)P002 健康成人における反復投与試験

健康成人男性(19~44歳)6~8例
オマリグリプチン25mg/週を3週間反復経口投与した。
オマリグリプチン投与後の血漿中のGLP-1濃度の変動を検証した。
テストミール負荷後2時間における加重幾何平均値

(3)QT/QTcに及ぼす影響(海外データ)21)

健康成人53例を対象に、1日目にオマリグリプチン25mg、2日目にオマリグリプチン175mgを単回投与した結果、ベースラインからのQTcP変化量のプラセボとの平均値の差は、すべての投与後測定時点で10msec未満となった。最小二乗平均値の差の最大値は3.66msec、その90%信頼区間は[1.56、5.76]であった。

QTcP(Population-specific heart rate correction for QT):
母集団データに基づき補正したQT間隔

21)P010 健康成人におけるQT/QTc評価試験

3.非臨床試験

(1)DPP-4阻害作用(in vitro22)

オマリグリプチンのヒト組換え型DPP-4に対するIC50値は1.6nMで、解離定数(Ki)は0.8nMでした。さらに、ヒト血清由来DPP-4に対するIC50値は低濃度(2%)血清存在下では2.1nM、高濃度(50%)血清存在下では6.7nMでした。
一方、標的外分子であるDPP-8、DPP-9、QPP、PEPおよびFAPに対するオマリグリプチンのIC50値は>100,000nMでした。

■ DPP-4に対するオマリグリプチンの阻害活性
n(例数) IC 50(nM)
ヒト組換え型DPP-4 3 1.6±0.03
ヒト血清DPP-4(2%血清存在下) 3 2.1±0.08
ヒト血清DPP-4(50%血清存在下) 3 6.7±0.13

平均値±標準偏差

■ 標的外分子に対するオマリグリプチンの阻害活性
n(例数) IC 50(nM)
DPP-8 2 >100,000
DPP-9 1 >100,000
QPP 2 >100,000
PEP 2 >100,000
FAP 2 >100,000

平均値

22)オマリグリプチンのin vitroおよびマウスでの薬理試験

DPP-8(dipeptidyl peptidase-8):ジペプチジルペプチダーゼ-8
DPP-9(dipeptidyl peptidase-9):ジペプチジルペプチダーゼ-9
QPP:quiescent cell proline dipeptidase
PEP:prolyl endopeptidase
FAP:fibroblast activation protein

DPP-4および標的外分子(DPP-8、DPP-9、QPP、PEP、FAP)に対するオマリグリプチンの阻害活性について連続蛍光分析法を用いて検討した。

(2)耐糖能および糖代謝改善作用(マウス)

①正常マウスの耐糖能に対するオマリグリプチン単回経口投与の影響22)

正常マウスを用いた経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)において、オマリグリプチンはブドウ糖負荷後の血糖値の上昇を抑制しました。

■ 経口ブドウ糖負荷後の血糖値の推移(正常マウス)
経口ブドウ糖負荷後の血糖値の推移(正常マウス)の画像

22)オマリグリプチンのin vitroおよびマウスでの薬理試験

一晩絶食させた雄性C57BL/6N マウス(7例/群)
媒体(0.25%メチルセルロース水溶液)、オマリグリプチン0.01、0.03、0.1、0.3、1mg/kgまたは陽性対照(デスフルオロシタグリプチン3mg/kg)を経口投与し、その60分後にブドウ糖5g/kgを経口負荷した。非糖負荷対照として、媒体を投与し水を経口負荷した群を設けた。

Dpp-4-/-マウスおよび野生型マウスにおけるオマリグリプチン単回経口投与の血糖降下作用22)

DPP-4欠損(Dpp-4-/-)マウスおよび野生型マウスを用いたOGTTにおいて、オマリグリプチンを単回経口投与した結果、野生型マウスの血糖値上昇は抑制しましたが、Dpp-4-/-マウスの血糖値上昇は抑制しませんでした。

■ 経口ブドウ糖負荷0~120分後の血糖AUC(Dpp-4-/-マウスおよび野生型マウス)
Dpp-4-/-マウスおよび野生型マウスにおけるオマリグリプチン単回経口投与の血糖降下作用の画像

22)オマリグリプチンのin vitroおよびマウスでの薬理試験

一晩絶食させた雄性Dpp-4-/-マウスまたは野生型マウス(7例/群)
媒体(0.25%メチルセルロース水溶液)またはオマリグリプチン3mg/kgを経口投与し、その60分後にブドウ糖5g/kgを経口負荷した。非糖負荷対照として、媒体を投与し水を経口負荷した群を設けた。

③正常マウスにおけるオマリグリプチン単回経口投与の血漿中DPP-4活性および活性型GLP-1濃度への影響22)

正常マウスを用いたOGTTにおいて、オマリグリプチンは血漿中DPP-4活性を阻害し、血漿中活性型GLP-1濃度が上昇しました。

■ 経口ブドウ糖負荷試験におけるオマリグリプチンの薬力学的評価(正常マウス)
経口ブドウ糖負荷試験におけるオマリグリプチンの薬力学的評価(正常マウス)の画像

22)オマリグリプチンのin vitroおよびマウスでの薬理試験

一晩絶食させた雄性C57BL/6N マウス(9~10例/群)
媒体(0.25%メチルセルロース水溶液)またはオマリグリプチン0.01、0.03、0.1、0.3、1mg/kgを経口投与し、その60分後にブドウ糖5g/kgを経口負荷した。ブドウ糖負荷10分後に採血し、血漿中のDPP-4活性および活性型GLP-1濃度を測定した。
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