指定難病
指定難病
- ・平成27年1月1日に施行された「難病の患者に対する医療等に関する法律(難病法)」の中では、医療費助成の対象とする疾患を指定難病と呼んでいます。
- ・難病は、①発病の機構が明らかでなく、②治療方法が確立していない、③希少な疾患であって、④長期の療養を必要とするもの、という4つの条件を必要としていますが、指定難病にはさらに、⑤患者数が本邦において一定の人数(人口の約0.1%程度)に達しないこと、⑥客観的な診断基準(またはそれに準ずるもの)が確立していること、という2条件が加わっています。
- ・すなわち、指定難病は、難病の中でも患者数が一定数を超えず、しかも客観的な診断基準が揃っていること(さらに重症度分類で一定程度以上であること)が要件としてさらに必要となります。
- ・令和6年4月現在、指定難病は341疾病あり、告示番号43が顕微鏡的多発血管炎(MPA)、44が多発血管炎性肉芽腫症(GPA)となっています。
難病及び指定難病の定義
【参考】難病情報センター「2015年から始まった新たな難病対策」(https://www.nanbyou.or.jp/entry/4141)医療費助成の対象となるMPA及びGPAの重症度分類
医療費助成の対象となるMPA及びGPAの重症度分類は以下の通りです。
MPA及びGPAの重症度分類
1)又は2)を認める場合を重症とする。
1)顕微鏡的多発血管炎(MPA)又は多発血管炎性肉芽腫症(GPA)による以下のいずれかの臓器障害を有する。
臓器 | 障害の内容 |
---|---|
腎臓 | ①又は②を満たす場合 ①CKD重症度分類ヒートマップの赤色に該当*1 ②いずれの腎機能であっても尿蛋白0.5g/日以上又は0.5g/gCr 以上 |
肺 | 特発性間質性肺炎の重症度分類でⅢ度以上に該当*2、又は肺胞出血、又は気道狭窄(GPAのみ) |
心臓 | NYHA2 度以上の心不全徴候*3 |
眼 | 良好な方の眼の矯正視力が0.3 未満 |
耳 | 両耳の聴力レベルが70 デシベル以上、又は一側耳の聴力が90デシベル以上かつ他側耳の聴力レベルが50デシベル以上の聴力障害 |
平衡機能の著しい障害、又は極めて著しい障害*4 | |
腸管 | 腸管梗塞、消化管出血 |
皮膚・軟部組織 | 四肢の梗塞・潰瘍・壊疽、又はそれらによる四肢の欠損・切断(部位は問わない) |
神経 | 脳血管障害により、modified Rankin Scale で3以上*5 |
末梢神経障害により、徒手筋力テストで筋力3以下*6 | |
末梢神経障害による2肢以上の知覚異常 | |
肥厚性硬膜炎 |
2)血管炎の治療に伴う以下のいずれかの合併症を有し、かつ入院治療を必要とする。
- ・感染症
- ・圧迫骨折
- ・骨壊死
- ・消化性潰瘍
- ・糖尿病
- ・白内障
- ・緑内障
- ・精神症状
*1 CKD 重症度分類ヒートマップ
蛋白尿区分 | A1 | A2 | A3 | |||
尿蛋白定量(g/日) 尿蛋白/Cr比(g/gCr) |
正常 | 軽度蛋白尿 | 高度蛋白尿 | |||
0.15 未満 | 0.15~0.49 | 0.50 以上 | ||||
GFR 区分 (mL/分/1.73m2) |
G1 | 正常又は高値 | ≧90 | 緑 | 黄 | オレンジ |
G2 | 正常又は軽度低下 | 60~89 | 緑 | 黄 | オレンジ | |
G3a | 軽度~中等度低下 | 45~59 | 黄 | オレンジ | 赤 | |
G3b | 中等度~高度低下 | 30~44 | オレンジ | 赤 | 赤 | |
G4 | 高度低下 | 15~29 | 赤 | 赤 | 赤 | |
G5 | 末期腎不全(ESKD) | <15 | 赤 | 赤 | 赤 |
*2 特発性間質性肺炎の重症度分類
重症度分類 | 安静時動脈血酸素分圧 | 6分間歩行時 SpO2 |
---|---|---|
Ⅰ | 80Torr以上 | 90%未満の場合はⅢにする |
Ⅱ | 70Torr以上80Torr未満 | 90%未満の場合はⅢにする |
Ⅲ | 60Torr以上70Torr未満 | 90%未満の場合はⅣにする (危険な場合は測定不要) |
Ⅳ | 60Torr未満 | 測定不要 |
- ※ 上記の重症度分類でⅢ度以上を重症とする。安静時動脈血酸素分圧でⅢ度以上の条件を満たせば6分間歩行は実施しなくても良い。
*3 NYHA 心機能分類
クラス | 自覚症状 |
---|---|
Ⅰ | 身体活動を制限する必要はない心疾患患者。通常の身体活動で、疲労、動悸、息切れ、狭心症状が起こらない。 |
Ⅱ | 身体活動を軽度ないし中等度に制限する必要のある心疾患患者。通常の身体活動で、疲労、動悸、息切れ、狭心症状が起こる。 |
Ⅲ | 身体活動を高度に制限する必要のある心疾患患者。安静時には何の愁訴もないが、普通以下の身体活動でも疲労、動悸、息切れ、狭心症状が起こる。 |
Ⅳ | 身体活動の大部分を制限せざるを得ない心疾患患者。安静にしていても心不全症状や狭心症状が起こり、少しでも身体活動を行うと症状が増悪する。 |
- 上記分類でⅡ度以上を重症とする。
NYHA分類については、以下の指標を参考に判断することとする。
NYHA分類 | 身体活動能力(Specific Activity Scale:SAS) | 最大酸素摂取量(peakVO2) |
---|---|---|
Ⅰ | 6METs以上 | 基準値の80%以上 |
Ⅱ | 3.5~5.9METs | 基準値の60~80% |
Ⅲ | 2~3.4METs | 基準値の40~60% |
Ⅳ | 1~1.9METs 以下 | 施行不能あるいは基準値の40%未満 |
- ※ NYHA分類に厳密に対応するSAS はないが、「室内歩行2METs、通常歩行3.5METs、ラジオ体操・ストレッチ体操4METs、速歩5~6METs、階段6~7METs」をおおよその目安として分類した。
*4 身体障害認定の平衡機能障害
- ア 「平衡機能の極めて著しい障害」(3級)とは、四肢体幹に器質的異常がなく、他覚的に平衡機能障害を認め、閉眼にて起立不能、又は開眼で直線を歩行中10m以内に転倒若しくは著しくよろめいて歩行を中断せざるを得ないものをいう。
- イ 「平衡機能の著しい障害」(5級)とは、閉眼で直線を歩行中10m以内に転倒又は著しくよろめいて歩行を中断せざるを得ないものをいう。
- ウ 平衡機能障害の具体的な例は次のとおりである。
- a 末梢迷路性平衡失調
- b 後迷路性及び小脳性平衡失調
- c 外傷又は薬物による平衡失調
- d 中枢性平衡失調
- 上記分類で、「平衡機能の著しい障害」、「平衡機能の極めて著しい障害」相当の障害を重症とする。
*5 modified Rankin Scale
日本版modified Rankin Scale(mRS)判定基準書 | ||
---|---|---|
modified Rankin Scale | 参考にすべき点 | |
0 | 全く症候がない | 自覚症状及び他覚徴候が共にない状態である |
1 | 症候はあっても明らかな障害はない: 日常の勤めや活動は行える |
自覚症状及び他覚徴候はあるが、発症以前から行っていた仕事や活動に制限はない状態である |
2 | 軽度の障害: 発症以前の活動が全て行えるわけではないが、自分の身の回りのことは介助なしに行える |
発症以前から行っていた仕事や活動に制限はあるが、日常生活は自立している状態である |
3 | 中等度の障害: 何らかの介助を必要とするが、歩行は介助なしに行える |
買い物や公共交通機関を利用した外出などには介助を必要とするが、通常歩行、食事、身だしなみの維持、トイレなどには介助を必要としない状態である |
4 | 中等度から重度の障害: 歩行や身体的要求には介助が必要である |
通常歩行、食事、身だしなみの維持、トイレなどには介助を必要とするが、持続的な介護は必要としない状態である |
5 | 重度の障害: 寝たきり、失禁状態、常に介護と見守りを必要とする |
常に誰かの介助を必要とする状態である |
6 | 死亡 |
- 日本脳卒中学会版
- 上記スケールで3以上を重症とする。
*6 徒手筋力テスト
0 | 筋肉の収縮が観察できない |
---|---|
1 | 筋肉の収縮は観察できるが関節運動ができない |
2 | 運動可能であるが重力に抗した動きはできない |
3 | 重力に抗した運動が可能だが極めて弱い |
4 | 3と5の中間。重力に抗した運動が可能で中等度の筋力低下 |
5 | 正常筋力 |
- 注:一般に5段階評価と記載されるが、実際にはMMT 0 (筋収縮なし)が加わるため6段階評価となる。
- MMT 4の範疇に入るが、やや筋力が強めと判断されるものは4+と表現する。
- 上記スケールで3以下を重症とする。
- ※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項
- 1. 病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いずれの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確認可能なものに限る。)。
- 2. 治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であって、直近6か月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。
- 3. なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続することが必要なものについては、医療費助成の対象とする。
「多発血管炎性肉芽腫症(指定難病44)」(https://www.nanbyou.or.jp/entry/4012)