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座談会消化管ホルモンの最前線 ~消化管ホルモンから全身を診る~

若手の先生方に向けて

猿田:
最後に先生方から,これからさまざまな研究に取り組んでいこうという若手の消化器領域の先生方にメッセージをいただけますか.
坂本:
フェノタイプとして体重や肝機能のデータから疑問に思ったことをまとめていただくことで,まだまだ大きなデータが出ると思いますし,もちろん基礎研究もできると思います.今回お話いただいた先生方の各領域は,日常臨床をするなかで遭遇する患者さんの疾患の大半を占めると思うので,こういった領域で頑張っていただくことは,患者さんに大きな恩恵をもたらすと思います.
北村:
私はずっと高血圧や循環器を専門にしていましたが,同じ研究室の別のグループに消化器分野の大学院生がいました.彼がIBDのモデルをつくりAMを投与したところ,非常にいい結果が出たことが,いまの研究を進めるきっかけになりました.循環器のみならず消化器など別の分野の先生と一緒に研究することもメリットがあります.若いときに自分がこだわれる研究テーマをみつけ,継続して取り組むのが大事だと思います.
鈴木:
消化管ペプチドや消化管ホルモンは,いろいろな疾患やその急性期における大きな変化,あるいは慢性期のゆっくりとした変化とも関係があるわけです.一つひとつ症状に対して,こういったものを,どのタイミングで,どう臨床応用していくのかを綿密に治療計画に組み込むことが重要だと思います.つい,ガイドラインのファーストチョイスではないですが,「その病気には,まずこの薬」という思考に陥りがちですが,個々の患者様の個々の症状に対し何かよい方法はないかを考えるときに,ペプチド製剤やホルモン製剤はテーラーメード的判断のオプションとして今後大いに役立つと思います.近年,純粋に消化器疾患のみをかかえた患者様は少なく,糖尿病や循環器疾患などの生活習慣病を合併していることのほうが多いわけです.このような患者様の治療において,学問のエッセンスを臨床に応用できるリサーチマインドの高い人材を育てるべく,われわれも,この領域を牽引し,若手の先生方に興味をもってもらえるように指導する必要があると思います.
猿田:
私はかつて大学院時代に,東北大でウロコルチンの研究をしていました.UCはストレスで悪化するという点に注目して研究をしていたら,循環器系で話題になっていたウロコルチンがUCにも影響していると判明し,「ホルモンはやはり体全体に関係するのだ」と強く感じました.また,われわれのIBDの分野では,最近はサイトカインを中心にさまざまな領域の先生が集まって話し合う機会が増えてきており,非常によいことだと思っています.自分の専門領域には,その領域外にも広がりや相関があることを,今日先生方にお話を伺って再認識しました.読者の先生方にも,広い視野をもち,他領域はどうなっているのだろうと常に考えることが大切であることが伝わったかと思います.この古き,しかし新しい知識がたくさんあるホルモンは,まだまだ可能性を秘めていることがわかり,とても有意義な座談会となりました.本日はありがとうございました.
文献
1)Ito H, Ito K, Tanaka M et al:Constipation Is a Frequent Problem Associated with Vascular Complications in Patients with Type 2 Diabetes:A Cross-sectional Study. Intern Med 61:1309-1317, 2022
2)Kitamura K, Kangawa K, Kawamoto M et al:Adrenomedullin:a novel hypotensive peptide isolated from human pheochromocytoma. Biochem Biophys Res Commun 192:553-560, 1993
3)Kita T, Ashizuka S, Ohmiya N et al:Adrenomedullin for steroid-resistant ulcerative colitis:a randomized, double-blind, placebo-controlled phase-2a clinical trial. J Gastroenterol 56:147-157, 2021
4)Kita T, Ashizuka S, Ohmiya N et al:Adrenomedullin for steroid-resistant ulcerative colitis:a randomized, double-blind, placebo-controlled phase-2a clinical trial. J Gastroenterol 56:147-157, 2021
5)Kominato K, Yamasaki H, Mitsuyama K et al:Increased levels of circulating adrenomedullin following treatment with TU-100 in patients with Crohn's disease. Mol Med Rep 14:2264-2268, 2016
6)Suzuki T, Higuchi T, Kagami T et al:Effects of pirenzepine on vonoprazan-induced gastric acid inhibition and hypergastrinemia. Eur J Clin Pharmacol 77:971-978, 2021

出席者

猿田雅之サムネイル画像 猿田雅之サムネイル画像
猿田雅之
東京慈恵会医科大学内科学講座消化器・肝臓内科主任教授
Profile
1997 年 東京慈恵会医科大学医学部医学科卒業
1999 年 同 大学医学部医員
2002 年 同 大学医学部大学助手
2002 年 東北大学大学院病理学講座病理診断学分野 国内留学
2005 年 東京慈恵会医科大学大学院医学研究科臨床系内科学専攻博士課程 修了
2005 年 米国ロサンゼルス,Cedars―Sinai Medical Center,Inflammatory Bowel
Disease Centerへ留学(Researcher Post Doctor博士研究員)
2007 年 東京慈恵会医科大学附属病院内科学講座消化器・肝臓内科助教
2012 年 同 講師
2013 年 東京慈恵会医科大学(学校法人慈恵大学)大学評議員
2016 年より現職
坂本昌也サムネイル画像 坂本昌也サムネイル画像
坂本昌也
国際医療福祉大学医学部教授
国際医療福祉大学三田病院 糖尿病・代謝・内分泌内科部長
Profile
1997 年 東京慈恵会医科大学医学部卒業
1997 年 東京慈恵会医科大学附属病院研修医
2000 年 東京大学大学院医学研究科循環器内科特別研究生
2001 年 千葉大学大学院医学研究科循環病態医科学研究生
2006 年 東京慈恵会医科大学後期研修医修了
2006 年 東京慈恵会医科大学附属病院 糖尿病・代謝・内分泌内科助教
2012 年 同 講師
2014 年 同 医局長
2020 年 国際医療福祉大学三田病院 教授・内科部長・連携部長
2020 年7月~現在 国際医療福祉大学医学部 糖尿病・内分泌内科教授
鈴木秀和サムネイル画像 鈴木秀和サムネイル画像
鈴木秀和
東海大学医学部内科学系消化器内科学教授
Profile
1989 年 慶應義塾大学医学部卒業
1993 年 米国カリフォルニア大学サンディエゴ校研究員
2005 年 北里大学北里研究所病院消化器科医長
2006 年 慶應義塾大学医学部内科学(消化器)専任講師
2011 年 同 准教授
2015 年 慶應義塾大学医学部医学教育統轄センター教授
2016 年 東京歯科大学内科学講座客員教授
2016 年 日本微小循環学会理事長
2017 年 慶應義塾大学医学部 専修医研修センター長
2019 年 東海大学医学部内科学系消化器内科学教授
2019 年 東海大学医学部付属病院臨床研修部長
2019 年 北京大学医学部客員教授
2021 年 慶應義塾大学医学部内科学客員教授
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北村和雄
宮崎大学フロンティア科学総合研究センター特別教授
Profile
1980 年 宮崎医科大学医学部医学科卒業
1984 年 宮崎医科大学大学院医学研究科修了(医学博士号取得)
1984 年 宮崎医科大学付属病院医員(第一内科)
1985 年 University of Texas Southwestern Medical Center留学
1988 年 宮崎医科大学内科学第一講座助手
1995 年 宮崎医科大学第一内科講師
2006 年 宮崎大学医学部内科学講座循環体液制御学分野教授
2021 年 同上 定年退職
2021 年 宮崎大学フロンティア科学総合研究センター特別教授

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