2型糖尿病の
血糖コントロール改善に対する
CGMのベネフィット
~海外の最近の動向を含め~

東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科

髙橋 紘

②基礎インスリンのみ使用者

Martensらは,インスリンとして基礎インスリンのみ使用されている2型糖尿病患者でもCGMを使用することで,血糖コントロールが改善し,低血糖時間が減少すると報告している14)

米国内の15施設で実施された無作為化比較試験で,2018年7月~2019年10月に患者登録が開始され,2020年7月までプライマリ・ケア医で治療されていた2型糖尿病患者175例が登録された.経口血糖降下薬の有無にかかわらず,全例が持効型溶解インスリンによる治療をおこなっていた(食前インスリンの使用はなし).対象者の平均年齢は57±9歳,女性が50%,ベースラインの平均HbA1c値は9.1±0.9%であった.CGM群と従来のSMBG群に2対1に無作為に振り分け(CGM群116例,SMBG群59例),165例(94%)が試験を完遂した.

介入8ヵ月後のHbA1cは,CGM群では9.1%から8.0%に改善したのに対し,SMBG群では9.0%から8.4%とCGM群のほうが有意に低下していた(調整後の推定値の差 -0.4%,95%CI -0.8~0.1%,p=0.02).さらにTIRもCGM群が59%であったのに対し,SMBG群は43%とCGM群でより上昇し(同15%,95%CI 8%~23%,p<0.001),血糖値が250mg/dL以上だった時間はCGM群が11%,SMBG群が27%とCGM群のほうがより減少していた(同-16%,95%CI -21%~-11%,p<0.001).一方で,血糖値が70mg/dL未満だった時間もCGM群のほうが有意に短縮しており(同-0.24%,95%CI -0.42%~-0.05%,p=0.02)(図❸),重篤な低血糖事象の発生もCGM群が1%であったのに対しSMBG群では2%であった.

本検討では,インスリンとして基礎インスリンを1日1~2回自己注射している2型糖尿病患者を対象としている.さらにプライマリ・ケア医にてCGMを使用して糖尿病治療をおこなっている.わが国でもisCGMに関する間歇スキャン式持続血糖測定器加算の保険適用が拡大したため,より多くの糖尿病患者へCGMを使用した適切な患者教育がおこないやすくなり,血糖コントロールが改善する可能性がある.

③インスリン非使用者

近年ではインスリンを使用していない2型糖尿病患者に対してもCGMが生活習慣の改善に有用である可能性が報告されてきている.

Wadaらはインスリン治療を受けていない成人の日本人2型糖尿病患者100人を対象とした無作為化比較試験をおこない,isCGMを12週間使用することで,isCGMの使用を中止してもHbA1c低下が維持されることを報告している15).本研究では,対象者をisCGM群またはSMBG群に無作為割り付けし,12週間後にいずれのデバイスも使用できなくしたうえで24週間後まで観察をおこなった.

ベースライン時の平均HbA1cはisCGM群7.83%,SMBG群7.84%であったが,12週間後は両群で有意にHbA1cが低下していた(isCGM群:-0.43%,p<0.001,SMBG群:-0.30%,p<0.001).しかし,24週間後(デバイス使用を中止して12週間後)はベースラインと比較して,isCGM群では有意にHbA1cが低下していたが,SMBG群ではHbA1c低下が維持されておらず(isCGM群:-0.46%,p<0.001,SMBG群:-0.17%,p=0.124),さらに群間差が出現した(-0.29%,p=0.022)(図❹).TIRは両群とも12週間後に増加していたが,isCGM群のほうがSMBG群よりも9.8%(2.36時間/日)増加していた(p<0.001).これは,TBRに関してはベースライン時点で非常に発生が少なかったため12週間後に有意差を認めなかったが,TARが有意に低下したことがTIR増加の要因と考えられた.また血糖変動指標である,標準偏差(standard deviation:SD)やmean amplitude of glycemic excursions (MAGE )もisCGM群で有意に縮小していた.さらにisCGM群ではSMBG群にくらべてDTSQスコアも有意に改善していた.

また,Coxらはインスリン治療を受けていないHbA1c 7.0%以上の2型糖尿病患者30例を対象に,コントロール群とrtCGM群(血糖上昇を抑制するための生活習慣教育あり)に無作為割り付けし,ベースライン時と5ヵ月後に身体測定,食事調査,糖尿病治療薬,心理学的アンケートを実施した無作為化比較試験を報告している16).結果は,コントロール群よりもrtCGM群においてHbA1cが1.2%有意に低下していた(-0.1% vs. -1.3%, p=0.03).また,rtCGM群において糖尿病治療薬の追加が必要となる割合や炭水化物の摂取量が有意に減少し(p=0.01,p=0.009),糖尿病の知識およびQOLが改善していた(p=0.001,p=0.01).

以上より,CGMはインスリンを使用していない2型糖尿病患者においても,生活習慣の効果的な改善をもたらすことで,血糖コントロールが改善する可能性がある.

④その他

CGMは2型糖尿病患者のオンライン診療や費用対効果においても有用であることが報告されている.

Bergenstalらは遠隔医療でrtCGMを開始した594人(インスリン使用者217人,インスリン非使用者377人)の成人2型糖尿病患者を対象とした研究をおこなった.平均HbA1cはベースラインの7.7%からフォローアップ後(平均10.2ヵ月)には7.1%へ有意に低下していた(p<0.001)17).さらに参加者の満足度は非常に高く(5点満点中4.5点),参加者の97.0%でrtCGM使用により食事内容がどのように糖尿病に影響するかを理解できたとし,95.7%で糖尿病に関する知識が増えたと回答した.なお,インスリン使用の有無で満足度に違いはみられなかった(p=0.77).一方で,rtCGMのセンサーを遠隔による指導のもとで挿入することには問題がないとすることに同意または強く同意しており(94.7%),88.4%がrtCGMを再度使用したいと回答した.また,79.4%の参加者がrtCGM使用によりセンサー非装着時にも治療改善に役立つと回答した.

Fondaらは食前インスリンを使用していない2型糖尿病患者を対象にrtCGMとSMBGの費用対効果を検討した18).その結果,CGMが費用対効果にすぐれていることを報告している.さらに,Isaacsonらはプライマリ・ケアクリニックに通院中の糖尿病患者99人(2型糖尿病93人,1型糖尿病6人)を対象とし,rtCGM群とSMBG群に無作為割り付けして比較をおこなった報告では,rtCGM群のほうが総受診回数や救急搬送回数はSMBG群よりも有意に減少していた(p=0.009,p=0.018)19).

おわりに

CGMデバイスの進化に伴い,SMBGやHbA1cでは評価し得なかった詳細な血糖変動の情報が得られるようになり,血糖変動全体を把握したうえで,コントロールする時代に入りつつある.今後わが国においても2型糖尿病患者へCGMは普及していくことと予想される.

2型糖尿病患者においてもCGMの使用は生活習慣の改善,QOLの向上や医療コストの削減につながる可能性があることを示す報告がつづいている.興味深いことにインスリン使用の有無にかかわらずCGMは,血糖コントロール改善につながる可能性がある.この大きな時代の流れが,糖尿病患者の合併症の発症ならびに進展抑制,生命予後の改善,さらには糖尿病治療におけるスティグマの除去につながる日が訪れることを期待したい.

文 献

  • 1) Riddle MC, Gerstein HC, Cefalu WT:Maturation of CGM and Glycemic Measurements Beyond HbA 1c-A Turning Point in Research and Clinical Decisions. Diabetes Care 40 : 1611-1613, 2017
  • 2) American Diabetes Association:7. Diabetes Technology:Standards of Medical Care in Diabetes-2021. Diabetes Care 44(Suppl 1):S85-S99.2021
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  • 5) Huang ES, O'Grady M, Basu A et al : The cost-effectiveness of continuous glucose monitoring in type 1 diabetes. Diabetes Care 33 : 1269-1274, 2010
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  • 17)Bergenstal RM, Layne JE, Zisser H et al : Remote Application and Use of Real-Time Continuous Glucose Monitoring by Adults with Type 2 Diabetes in a Virtual Diabetes Clinic. Diabetes Technol Ther 23 : 128-132, 2021
  • 18)Fonda SJ, Graham C, Munakata J et al : The Cost-Effectiveness of Real-Time Continuous Glucose Monitoring (RT-CGM) in Type 2 Diabetes. J Diabetes Sci Technol 10 : 898-904, 2016
  • 19)Isaacson B, Kaufusi S, Sorensen J et al : Demonstrating the Clinical Impact of Continuous Glucose Monitoring Within an Integrated Healthcare Delivery System. J Diabetes Sci Technol 16 : 383-389, 2022

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