東京慈恵会医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科
髙橋 紘
CGMの普及に伴い,CGMの使用および転帰との関連についてさまざまな報告がなされている.いままでおこなわれてきたCGM関連の研究は,ほとんどが1型糖尿病を対象としたものであった.1型糖尿病患者を対象とした臨床試験では,CGMはSMBGと比較して血糖コントロールを改善させるだけではなく,低血糖リスクを低減し,費用対効果が高いことが報告されている4)~ 6).
近年では2型糖尿病を対象としたCGM関連の報告も増加してきている.とくに最近の研究では,MDIだけではなく,基礎インスリンのみ,あるいはインスリンを使用していない患者を対象とした報告も増加している.以下,治療法別におもな報告について紹介する.
MDIをおこなっている患者へのCGMの有用性に関しては,1型糖尿病と同様に2型糖尿病に関しても多数報告されている.
2型糖尿病患者におけるrtCGM使用に関する無作為化比較試験に関しては,すべてにおいてHbA1cの有意な低下が報告されている7)~ 9).BeckらはMDIをおこなっている158人の成人2型糖尿病患者を対象に,rtCGM(Dexcom G4)群または1日4回のSMBG群に無作為割り付けをおこない,HbA1cの変化量を比較した7).ベースラインのHbA1cはいずれの群も8.5%であったが,rtCGM群のほうがSMBG群よりも調整後平均HbA1cを12週,24週ともに0.3%有意に低下させていた(p=0.005,p=0.02).一方で,低血糖やQOLに関しては有意差を認めなかった.
Ehrhardtらは,ベースラインのHbA1cが高いほど,rtCGM使用にてHbA1cの低下が大きいことを報告している8).
KarterらはrtCGMを利用することで,HbA1cの改善だけではなく,低血糖による救急受診が減少することを報告している10).本検討は,インスリン治療をおこなっている1型糖尿病5,673人と2型糖尿病3万6,080人を対象とした後ろ向きコホート研究である.対象者のうち,3,806人(平均年齢42.4±19.9歳,女性51%,1型糖尿病91%,2型糖尿病9%)が,2015~2019年のあいだに新たにrtCGMを使用した.一方,3万7,947人(平均年齢63.4±13.4歳,女性49%,1型糖尿病6%,2型糖尿病94%)は従来の手法による血糖モニタリングをおこなった.ベースラインと比較して12ヵ月後の平均HbA1cや,低血糖または高血糖による救急受診・入院頻度などの変化を,rtCGM群と従来療法群で比較した.HbA1cはrtCGM群が8.17%から7.76%に低下したのに対し,従来療法群では8.28%から8.19%と変化がなかった(p<0.001).また,HbA1cが7%未満を達成した患者の割合も有意にrtCGM群で多かった(p<0.001).一方,低血糖による救急受診や入院は,rtCGM群では5.1%から3.0%に低下したのに対し,従来療法群では1.9%から2.3%に増加していた(p=0.001).
isCGMに関しても血糖コントロールの改善が報告されている.Evansらによる1型糖尿病および2型糖尿病の1,023人を含むisCGMの無作為化比較試験のメタ解析では,isCGMを使用することでHbA1cはベースラインよりも-0.56%(95%CI -0.76~-0.36)低下していた11)(図❶).isCGM開始2ヵ月以降でHbA1cは大幅に低下しはじめ,その効果は12ヵ月間継続していた.サブ解析では1型糖尿病と2型糖尿病のあいだに有意差はなかった(95%CI -0.51~0.17,p=0.2883).さらにHbA1cの変化率はisCGM開始時のHbA1c値と有意に逆相関していた〔isCGM開始時のHbA1cが1%増加するごとに-0.31%(95%CI -0.43~-0.19)低下する〕.
また,Haakらは欧州にてMDI施行中の成人2型糖尿病患者224人を対象にisCGM群とSMBG群に無作為割付をおこなって施行したREPLACE RCTにおいては,ベースラインから6ヵ月後のHbA1cの変化は両群比較にて有意差を認めなかった12).しかし,65歳未満の対象者のみでサブグループ解析すると,isCGM群でSMBG群よりも有意なHbA1c低下を認めた(p=0.03).著者らは,若年者のほうがSMBGの遵守率が低く,一方でisCGMではセンサースキャンの利便性が高いために測定回数が多くなったことが影響したのではないかと考察している.また,isCGM群ではSMBG群にくらべ低血糖時間が0.47時間/日減少し(p=0.0006),夜間低血糖も0.29時間/日減少したが(p=0.0001),血糖値70~180mg/dLの割合(time in range :TIR)と血糖値180mg/dLを超える割合(time above range :TAR )には有意差はなかったとしている.
同様に,Ogawaらは日本人2型糖尿病でMDI施行中の対象者に対して,isCGMの使用が有用であることをSHIFT試験にて報告している13).この試験ではisCGMを90日間装着して,使用前後でのHbA1c,TIRや糖尿病満足度質問票(diabetes treatment satisfaction questionnaire:DTSQ )の変化を検討した.結果は平均の推定HbA1cはベースラインの7.46%から0.39%有意に低下し(p<0.0001),さらにベースラインと比較して血糖値70mg/dL未満の割合(time below range:TBR )は2.13%から1.96%と変わらないものの,TARが35.42%から28.33%へ低下したことでTIRは62.50%から69.58%へ増加していた.また,DTSQはisCGM使用により治療満足度や利便性・融通性など,すべての項目で有意に改善していた(図❷).
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