聖路加国際病院内分泌代謝科,
東京医科歯科大学医学部
能登 洋
2型糖尿病診断時から包括的生活スタイルの改善とともに,メトホルミンを投与することが一般的に推奨されている.
さらに,SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬(経口薬はエビデンスが乏しいため対象外)が条件付き選択肢として格上げされた.すなわち,第一選択薬候補がメトホルミンを含む3剤になり,患者中心アプローチがいっそう重視されている(図❸).
成人2型糖尿病で心血管疾患(ASCVD)/心不全(HF)/CKDを合併している場合やそのリスクが高い場合(以下,「ASCVD/HF/CKD患者」)には,HbA1c基礎値や目標値やメトホルミンの使用とは無関係にSGLT2阻害薬,GLP-1受容体作動薬が第一選択薬のオプションとして推奨されている.ただし,SGLT2阻害薬,GLP-1受容体作動薬のエビデンスの多くはメトホルミンへの上乗せ効果を実証したものであり,臨床的インパクト(絶対リスク低下)は必ずしも大きくないことに注意する必要がある.
一方,糖尿病発症予防・小児・高齢者ではメトホルミンが依然として単独第一選択薬となっている.
個別化判断に基づき,低血糖リスクを回避することが優先の場合はDPP-4阻害薬,GLP-1受容体作動薬,SGLT2阻害薬,チアゾリジン薬が選択肢となり,体重増加回避・体重減少を優先する場合はGLP-1受容体作動薬,SGLT2阻害薬が選択肢としてあげられている.費用・アクセスを考慮する場合は低薬価インスリン,SU薬,チアゾリジン薬があげられている.低薬価インスリンに関しては,バイアル製剤を針付き注射器で注入する場合は費用対効果はかなり高い.
注射薬を導入する場合は,インスリンよりもGLP-1受容体作動薬を優先することが推奨されている.
これは,GLP-1受容体作動薬の血糖降下度が基礎インスリンと同等であること,インスリンは体重増加をきたしやすいがGLP-1受容体作動薬は減量効果があること,GLP-1受容体作動薬による心血管イベント抑制エビデンスがあること,GLP-1受容体作動薬は低血糖を起こしにくいことなどに基づく.ただし,GLP-1受容体作動薬は高価であり,消化器系有害事象が多いことが障壁となる.
糖尿病患者は心血管疾患リスクが高いとはいうものの,日本人糖尿病患者3)の心血管疾患罹患率・有病率は欧米人患者4)よりもまだ格段に低値である.欧米ではSGLT2阻害薬,GLP-1受容体作動薬の位置づけが高まってきているが,日本人における絶対的なベネフィットは欧米人ほど大きくはないであろう.
最新のエビデンスを反映し実用性に長けている日本糖尿病・生活習慣病ヒューマンデータ学会の診療マニュアル5)では,第1選択薬はメトホルミンであり,SGLT2阻害薬はDPP-4阻害薬とともに第2選択薬として位置づけられている(図❹).
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