今回のテーマは,PHR(Personal Health Record)です。
PHR(Personal Health Record)
PHRに関する記述で正しいものを選んでください(正解はひとつとはかぎりません)
- スマートフォンアプリを通じて自分の健康・医療情報を収集・保管・活用する仕組み
- 電子化した健康医療情報データを,医療保険者が活用,分析して行う保健事業
- 医療機関が電子化した患者記録(電子カルテ)を含む個人の診療情報を,地域医療連携ネットワークでつないで共有し活用する仕組み
- 個人の医療・介護・健康に関するデータを電子記録して,一元的にまとめることで,本人や家族が生涯にわたって時系列的に管理・活用する仕組み
答え:2),4)
~他の選択肢~
- データヘルス近年,レセプトや健診などの健康医療情報の電子的保管が進み,それらの情報を活用した分析が可能となりました。医療保険者(市町村,健康保険組合など)がそのような情報を分析したうえで行う,加入者の健康状態に即した効果的・効率的な保健事業を,データヘルスといいます。この取組みにより,生活習慣病の予防,健康寿命の延伸,生活の質の向上を目指します。
- EHR (Electronic Health Record)EHRは,個人の医療情報を含む電子健康記録で,複数の医療機関が収集,管理したデータをネットワークでつないで共有し活用する仕組みです。患者が医療機関を変えても追従でき,患者本人のためにのみ利用されるほか,匿名化されたデータは研究,教育,公衆衛生などのために再利用されます。 一方,従来の紙のカルテを電子化した電子カルテ(EMR:Electronic Medical Record)は,一つの医療機関のみで運用されます。EMR/EHRは,患者自身が利用することはできません。最近,厚生労働省は,電子カルテの規格を統一するなど全国的なプラットフォームを整備することを明らかにしました。
解説
PHRの活用
日本ではPHRの厳密な定義がされていませんが,PHRとして扱う情報は,健診・検診情報(特定健診,後期高齢者健診,がん検診,歯周疾患検診,学校健診など),生活習慣に関する情報(歩数などの運動習慣,食習慣,飲酒,喫煙,睡眠時間など),予防接種歴,薬剤服用歴,自己測定による血圧や血糖,体重などのバイタルデータ,地域医療連携ネットワークで共有される診療情報など多岐にわたります。
蓄積されたデータは,さまざまなサービスに活用されます。たとえば,引越し先の医療機関でこれまでの診療情報を把握したうえで診察される,あるいは個人の健康状態に即して予防・健康増進プログラムが提供される,といったことも可能になります。
PHRによる糖尿病管理
最近,PHRを用いた糖尿病治療の多施設共同コホート研究(e-PROMIS)1)により,24ヵ月間の長期にわたるPHR利用が,糖尿病患者の疾病管理に有用であることが示唆されました。PHRを利用した糖尿病管理では,血糖値や体重,食事・運動などのデータが記録,見える化され,患者の動機づけ,意識や行動の変容につながり,自己管理のサポート効果も期待されます。また,患者と医療従事者が情報を共有することでコミュニケーションが円滑となり,療養指導を効果的・効率的に行えることにより治療継続が期待されます。
今後の課題として,デジタル機器の利用が難しい人や世代への対応,個人情報保護やセキュリティの確保が求められています。
1)朝長修ほか.糖尿病2021; 64: 341-349.
厚生労働省.「国民の健康づくりに向けたPHRの推進に関する検討会(第1回)」(令和元年9月11日)資料7.「PHRの検討に関する論点や基本的な方向性について(案)
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000546640.pdf
厚生労働省.「国民の健康づくりに向けたPHRの推進に関する検討会(第1回)」(令和元年9月11日)資料4.
「総務省のPHRに関する取組」
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000546637.pdf