kissei

Basic Knowledge

「診療現場でよく耳にする言葉,きちんと説明するとなると,知っているようでよくわからない,
似ていて違いがわからない」と思ったことはありませんか。本コラムでは,糖尿病診療の
現場で使われている用語とその考え方,最新の話題についてクイズ形式でご紹介します。

今回のテーマは,「患者参加型医療」です。

患者参加型医療

Q次のなかで,「患者参加型医療」を意味する英語はどれでしょうか
(答えは一つとは限りません)。

  • patient centricity
  • patient and public involvement
  • patient engagement
  • shared decision making

A 答え:1)~4)すべて

解説

患者参加型医療とは?-医療者中心から患者参加へ-

 かつて患者は,医療者が主体となって決めた治療を「受ける人」でした。しかし,現在は医学の進歩により医療システムが複雑化・専門化し,高齢化により複数の併存疾患をもつ患者も増えたことで,一人の患者のケアに複数の医療機関・多職種が関わるようになりました。治療選択肢が増えた一方で患者のニーズも多様化し,患者にとって最善のケアを医療者だけで決定することは難しくなっています。

 このような背景から最近注目されるようになったのが,医療チームの一員として患者に積極的に医療に参加してもらう「患者参加型医療」という考え方です。patient centricity,patient and public involvement(PPI),patient engagement,shared decision making (SDM)などさまざまな呼び方があり,医療者と患者だけでなく,企業や規制当局など医療を取り巻く多様な側面とのかかわり方に応じた取組みがなされています1, 2)

 類似した他の概念として,「患者中心の医療(patient-centered care)」があります3)。具体的な進め方や定義について多くの検討が行われてきましたが,そのなかで一歩進んだ医療コミュニケーションの形として生まれたのが「患者参加型医療」です4)

患者参加の実現へ向けたさまざまな取組み

 患者参加型医療への取組みは,多方面から行われています。たとえば,臨床研究の計画・実施に患者や市民が参加する活動は「患者・市民参画(PPI)」と呼ばれ,2019年に日本医療研究開発機構(AMED)が研究者・患者・市民向けのガイドブックを作成し,その活用を呼びかけています5)。また,製薬業界では患者の声を医薬品開発に活かそうという「patient centricityに基づく活動」が行われています。日本製薬工業協会は2016年から取組みを開始し,2017年以降,活動を実施するためのガイドブックをWeb上で公開しています6)。これらの活動は欧米で2000年代から進められてきた「患者参画(patient engagement)」の考え方を基盤としたもので,日本でも企業と患者団体の対話などが始まっています。

 また,患者と医療者で協働して治療法を決定する協働(共同)意思決定(SDM)や,病院運営・医療政策などへの患者参画も患者参加型医療に含まれます。また,医療機関で患者・家族と医療者の対話を支援する「医療対話推進者(医療メディエーター)」の役割も認知されつつあり,医療制度上も2012年度から患者サポート体制充実加算7),2022年度から重症患者初期支援充実加算8)が認められています。

糖尿病における患者参加

 糖尿病や高血圧,脂質異常症などの慢性疾患では,患者が自身のケアに積極的に参加することが治療の成否に大きく関わります。特に糖尿病は,食事・運動療法や自己血糖測定,インスリン注射,腹膜透析など,患者やその家族が自身のケアを管理する必要があり,以前から患者参加が進んでいる領域ともいえます。

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