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体験から学ぶ 透析室の災害・減災対策 第2回

腹膜透析患者への震災対応のポイント

熊本地震を体験した熊本赤十字病院 透析看護認定看護師の城間久美絵先生に、その教訓を生かした透析室の災害・減災対策について3回シリーズで伺います。第2回は、被災しても医療者の助けをすぐに受けることのできない腹膜透析の患者さんに対して、平時から備えておきたいポイントについて紹介します。

熊本地震の患者体験をもとに
APDの緊急離脱方法を考案

当院では地震発生当時、腹膜透析を行っている約30名の患者さんのうち、4分の3はAPD(自動腹膜透析)を選択されていました。震度7の本震が未明に襲った際、ほとんどの患者さんは夜間透析中であり、自己判断でAPDを中断し、切り離しをして命からがら逃げたそうです。「どうやって切り離したのか思い出せないほど怖かった」と患者さんたちは口々に語り、そのときの恐怖から今もAPDに戻れない人がいます。

私たちはこの事態を重く受け止め、震災後、医師とともにAPDの緊急離脱方法について検討を重ねました。そして考案したのが、透析装置と接続チューブの間に2か所のクランプを行い、その間をハサミで切り離す方法です。機器を使用した通常の方法では離脱操作に約3分かかりますが、この方法ならどの患者さんも約30秒で切り離しをすることができました。

現在では説明用のリーフレットを作成し、患者さん全員に緊急離脱方法を指導しています。接続チューブは意外に硬いので、患者さんには必ず一度、ハサミで接続チューブを切る体験をしてもらっています。また、透析治療中は安全に配慮しながら手の届く場所にハサミを必ず置いておくこともアドバイスしています。

CAPDへの治療変更を想定し
平時から手技や備蓄品を指導

一方、ライフラインが途絶えた震災直後は、APDからCAPD(持続携行式腹膜透析)に治療変更しなければならなくなりました。CAPDの手技を忘れてしまった患者さんには来院していただき、再指導を行いました。このときの教訓をもとに、現在もAPDの患者さんには、接続チューブ交換の際にCAPDの手技を確認するようにしています。高齢患者さんのご家族にも来院していただき、災害のとき、代わりに透析装置の操作ができるよう、APDやCAPDの手技を指導しています。

また、APDの患者さんの自宅にCAPDに使用する透析液を配送しています。震災直後は、避難所や親類宅に身を寄せた人たちも少なくなく、配送場所を変更したり、腎センター(透析室)に透析液交換場所を設置したり、直接PD液を受け取りに来てもらったりしました。この経験から、被災しても速やかにCAPDに切り替えられるよう、1週間分のツインバックを自宅に保管しておくことを指導しています。

腹膜透析の場合、被災しても医療者の助けをすぐに受けられないため、平時から震災などの災害を想定した備えをしっかり行っておくことが大切です。

最終回は、支援透析における実際のポイントと注意点について解説します。

APD使用患者緊急時の離脱方法

APD使用患者 緊急時離脱方法説明リーフレット。避難後、安全が確保できたら専用の機器を用いて、切断した回路を早めに取り外す。

※感染対策を行い取材しました(2020年3月)。

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