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体験から学ぶ 透析室の災害・減災対策 第1回

災害に備える患者指導と対策のポイント

地震をはじめ自然災害はいつ発生するかわかりません。有事に備え、透析スタッフも日頃から災害・減災対策を講じておくことが大切です。そこで、熊本赤十字病院 透析看護認定看護師の城間久美絵先生に、2016年の熊本地震の体験を生かした透析室の災害・減災対策について3回シリーズで伺います。第1回は、災害に備える患者指導と対策のポイントです。

対応を具体的に伝えることが
患者さんの安心感につながる

熊本地震の本震が未明に発生した4月16日は土曜日で、ライフラインが途絶えるなどの被害を受けていた当院にも、夜が明けると数名の血液透析患者さんが来院されました。そこで、当院では透析治療が行えないこと、ライフラインが復旧するまでは他の支援施設での治療になることを説明し、納得いただいていったん自宅に戻ってもらいました。透析治療の中断は、生命予後に直結するだけに患者さんの不安は大きく、災害時には自分たちが行える対応をできるだけ速やかに、より具体的に伝えることが大切です。

この教訓から、災害が発生した際には、患者さんには自宅にとどまってもらい、こちらから個別に連絡を入れるよう対応を統一しました。震災時の安否確認に時間を要した患者さんもいたことから、現在は年1回、本人の携帯電話だけでなく、自宅と家族の連絡先の3か所を必ず確認しています。

実効性のある対策にするために
患者さんと一緒に訓練を

また、透析中に停電すると自家発電に切り替えることになるため、その操作を透析室のスタッフ全員が習得しておくことが不可欠です。さらに、避難する際には返血するか緊急離脱かといった判断も迫られます。災害や被害の大きさに応じて治療の方針や対応を決めておくことも必要です。

当院では震災後に患者参加型の避難訓練を実施するようになりました。患者さんを引率して実際の避難経路をたどってみると、階段を降りるときに予想以上に時間がかかるといった実感に加え、一人ひとりの患者さんがどの程度歩けるのか、どのくらいの介助が必要なのかを知ることができました。

こうした経験を踏まえ、普段の透析治療においても、元気な患者さんを非常口に近いベッドに配置し、災害で避難する際の誘導サポートをお願いしています。避難訓練に参加した患者さんは災害対策に対する興味が高まり、積極的に協力してくださるようになりました。患者さんと一緒に災害対策を行っていくことは、スタッフだけで行うよりも実効性があると考えています。

また、震災後に熊本県透析施設協議会、熊本県臨床工学技士会、熊本県腎不全看護研究会が共同で「透析患者さんの防災ハンドブック」を作成し、県内の全ての透析患者さんに配布しました。災害に備えて日頃から準備しておくこと、災害時に注意しなければならないことなどをまとめており、特に食事や薬については震災の教訓を生かした内容となっています。

いざというとき落ち着いて行動するためには、避難訓練を含め、震災時の指導を繰り返し行う必要があります。“患者さんと一緒に取り組む”ことを念頭に置いて、自院ではどのような訓練や患者指導を行うべきなのか、透析スタッフ全員で話し合い、ぜひ実行してみてください。

次回は、震災時における腹膜透析の患者さんへの対応について解説します。

透析患者さんの防災ハンドブック
避難所では高カリウムな果物や弁当など塩分の多い食品が配給されているため、体重が極端に増加したり心不全を起こしたりする実例があった。これを踏まえ「透析患者さんの防災ハンドブック」では、配給食で気を付けるべき点が具体的にわかるような内容にした。

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