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男性の健康寿命の延伸を目指しLOH症候群の治療に取り組む 大阪梅田メディカルセンター ほしやまクリニック(大阪府大阪市)

働き盛りの男性を襲う「LOH症候群」。その原因は加齢やストレスによる男性ホルモンの減少です。医療の世界での認知度は低い疾患ですが、近年の研究からメタボリックシンドロームや心筋梗塞、脳梗塞、がんなどの発症リスクを高めることも判明しています。今回はLOH症候群の治療をライフワークに「メンズヘルス外来」を開設したほしやまクリニック院長の星山文明先生に、開設にいたる経緯と診療戦略を中心にお話を伺いました。
【病院情報】
2019年3月開設
【URL】
https://hoshiyama-clinic.net/
https://www.ou-mc.com/(大阪梅田メディカルセンター)

メタボ、心血管病、がんなどの発症リスクを高めるLOH症候群

西日本最大級の規模を誇るJR大阪駅の駅前に建つヒルトンプラザイースト。この5階フロアに大阪梅田メディカルセンターはある。星山先生は開業するにあたり、働き盛りの男性が利用しやすい場所を特に重視した。

「妻の更年期も診療してほしいとの要望があります。チャンスがあれば女性更年期外来も開設し、夫婦で通院できる環境を整えたい」と星山文明先生。患者さんのニーズに耳を傾け、将来の診療計画を構想する。

2019年3月、JR大阪駅・地下鉄梅田駅直結のヒルトンプラザイースト5階に「大阪梅田メディカルセンター」がオープンしました。自動調剤技術を駆使した日本初の“ロボット薬局”が開局したことでメディアの話題を呼びましたが、このメディカルモールでは診療科が異なる5つのクリニック(内科、心療内科・精神科、皮膚科、泌尿器科、整形外科)が緊密に連携しながら、それぞれの強みを生かした診療を行っており、そのうちのひとつが泌尿器を専門とする「ほしやまクリニック」です。

院長の星山文明先生は医学部を卒業後、地域の急性期病院に勤務し、前立腺肥大症、尿失禁、神経因性膀胱などの排尿障害、泌尿器がん、尿路感染症、尿路結石症、慢性腎臓病、血液透析の管理など、泌尿器全般にわたる診療に従事してきました。開業後は排尿障害を中心とした泌尿器一般の診療を引き続き行う一方で、メンズヘルス外来を開設し、「LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)」の治療にも積極的に取り組んでいます。

「LOH症候群とは、俗にいう“男性更年期障害”のことです。加齢やストレスなどの要因により男性ホルモン(テストステロン)が急激に減少することによってさまざまな症状が出現します」と星山先生は解説します。その症状は身体症状と精神症状に大きく分類され、前者では勃起不全(ED)など男性機能の低下をはじめ、のぼせ・多汗、全身倦怠感、筋肉や関節の痛み、筋肉量の低下、骨密度の減少、頭痛、めまい、耳鳴り、動悸、頻尿といった多様な症状がみられます。

一方、後者では性欲減退、不眠、無気力、イライラ、集中力や記憶力の低下とともに、うつ症状が現われることもあります。「近年の研究からLOH症候群は、メタボリックシンドロームや心筋梗塞、脳梗塞、がんなどの生活習慣病とも関連し、その発症リスクを高めることも明らかになっています」。

メディカルモールの機能を生かし他科と連携しながら治療にあたる

カフェスペースを取り囲むように各クリニックが並ぶ。診療科を厳選し、一つの病院機能を持つように設計された梅田メディカルセンターでは緊密な連携が可能だ。

泌尿器を専門とする医師にもそれほど知られていないLOH症候群の治療に星山先生が熱心に取り組むようになったのは、ご自身の体験によるものです。「勤務医として重要なポストに就き、やりがいを持って仕事をしていましたが、あるとき突然、燃え尽きたようにパワーを失ったのです」と先生は正直に述べます。同時に体にさまざまな不調を感じるようになり、LOH症候群を疑ってテストステロンの量を測ってみると、極端に減少していることが判明しました。

そこで手探りながらもLOH症候群の治療を自身に施したところ、驚くほどの効果が得られたといいます。「これほどクリアに治せる疾患なのかと心底実感しました」。そして、自分と同じようにLOH症候群に悩まされている働き盛りの男性をサポートしたいと考えるようになったといいます。「この疾患は40代後半から増え始め、最も多いのは50~60代です。調子がよくないのは年のせいだと見過ごされていることも少なくないのです」。こうして星山先生はLOH症候群の治療をライフワークに掲げました。その直後、タイミングよく大阪梅田メディカルセンターへの経営参画が決まり、メンズヘルス外来をスタートさせたのです。

特殊外来を開設して約10か月。インターネットによる検索を中心にLOH症候群の患者さんは着実に増えています。近畿一円から受診する人が多く、最近は外国人の患者さんもクチコミを頼りに来院するようになりました。「患者さんの大半を40~60代が占めますが、80~90代もおられます。予想以上に潜在的なニーズがあることを知りました」と先生は確かな手応えを感じています。

患者さんにはLOH症候群の治療が自費診療であることを説明し、承諾を得たうえで診断に必要な各種検査がパッケージ化されている「男の活力ドック」(血液一般検査、ミネラル検査、腫瘍マーカー、男性ホルモンの測定)を受けてもらいます。診断の結果、LOH症候群であることが確定すると、ホルモン補充療法を実施します。「当院では男性ホルモンの注射とサプリメント(DHEA)の投薬による治療を行っており、症状に合わせて薬量を調節するなどオーダーメイド医療を基本としています」。

また、うつや不安など精神的な症状が強く専門治療を必要とする場合は、メディカルモールにある心療内科・精神科を紹介します。メタボリックシンドロームを併存している場合は、内科に紹介し、糖尿病や高血圧症など生活習慣病の治療を受けてもらいます。高齢で骨粗しょう症が心配される場合は整形外科に紹介し、骨密度検査による骨の状態の確認を行います。「当院がハブとなり、患者さんのさまざまな症状に対応しています。LOH症候群は全身疾患でもあるので他科との連携は必須です。メディカルモールにクリニックを構えたのも最初からこのような狙いがあったからです」と先生は診療戦略を明かします。

理学療法士と協力し体操を考案 日常的なサポートにも乗り出す

テストステロンが減少する原因を探るために、患者さんが話しやすい環境をつくることに腐心する。部屋の照明を暗くし、診察机の棚には男性の冒険心を刺激するプラモデルなどの小物も。

ほしやまクリニックの入口に置かれている植栽に飾られた昆虫の標本。少年時代に感じたワクワクした気持ちを思い出してほしいとの思いが込められている。

一方で星山先生には忘れられない患者さんがいます。それはメンズヘルス外来の第1号の患者さんで、胃がんを患っている人でした。「疲れ切って身なりにも構わず、人としての活力を失っている状態でした」と先生は初診の印象を振り返ります。男性ホルモンを測定してみるとテストステロンの量は減少しており、すぐにホルモン補充療法を開始しました。

そして1週間後、診察室に再び現れた患者さんは別人のように元気を取り戻していたのです。身なりもきちんと整い、「本来の僕はこうなんです」と先生に満面の笑みで告げたそうです。「患者さんがとても喜んでくれてメンズヘルス外来を開設して本当によかったと思いました。働き盛りの男性が復活する姿を見るのは実に嬉しいものです」と先生はメンズヘルス外来のやりがいについて語ります。

最近はLOH症候群に対して薬物療法だけでなく、運動療法も積極的に取り入れています。「テストステロンが減少すると、筋肉量が低下したり骨密度が減ったりすることも判明しています。一方、テストステロンは筋肉でつくられるため、その上昇・維持には適度な運動が必要だといわれています。そこで、当院の隣で実兄が経営する整形外科(ほしやま整形外科医院)の理学療法士に協力してもらい“テストステロン体操”を考案しました」。運動療法を希望する患者さんには整形外科で理学療法士からテストステロン体操の指導を受けられるようにしています。

さらに、内科医や栄養士との食事療法に関する協働や、近隣の飲食店とのメニュー開発など、今後の展開にも意欲的です。「運動と同様に日常的に取り組んでもらうための手段の一つとしてテストステロンの上昇・維持に効果的な食事を提案したいのです」。

人生100年時代を迎え、健康寿命の延伸が国家的課題となる中、LOH症候群への治療やサポートは、その切り札となる可能性を大いに秘めています。「その人の生涯を通じて支援する」という強い決意のもと、星山先生はLOH症候群に悩まされる働き盛りの男性と向き合い続けます。

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