ウェアラブル・デバイスの使用者データを用いた研究で、夜間頻尿は加齢とともに増加し、睡眠と生活の質(QOL)の低下に関連することが確認されています1)。この研究で、ウェアラブル・デバイスから取得したデータで夜間頻尿と睡眠の関係を調査できることがわかりました。また、夜間頻尿は若年の生産年齢層でもみられ、若い年齢層ほど夜間頻尿の煩わしさと昼間行動への影響が大きく、睡眠の中断と夜間排尿回数が強く相関することも示されました。
この研究には、後ろ向きと前向きの二つのデータセットがあります。後ろ向きデータセットでは、25万人(男性57%)のデータ解析により、総睡眠時間(=睡眠時間-中途覚醒時間)は加齢に伴い短縮し、睡眠効率も低下することが明らかになりました。
前向きのデータセットとして、10項目の質問票を送付し7,141人から回答が得られました。排尿のために夜間に起きた回数が2回以上の割合は、男性で65~74歳が39.6%、75~90歳は55.3%と加齢に伴い増えました。一方、毎晩排尿のために睡眠が中断されて「かなり」あるいは「極めて」煩わしい割合、夜間頻尿が昼間の活動に「かなり」あるいは「極めて」影響した割合は、いずれも若い人ほど多く、高齢者と比べて困窮度が大きいことがわかりました。
夜間排尿回数が増えると、中途覚醒時間が長くなり、睡眠効率も低下します。また、夜間排尿回数が増えるほど、就寝後夜間第一尿(覚醒)までの時間(HUS)は短くなります(図1)1)。
上記のデータセットから65歳以下の日本人のみのデータを用いて検討したNOCTURNE studyを紹介します2)。対象とした9,446人のうち男性が7,377人でした。
前向きデータセットでの質問票への回答では、睡眠の満足度は「あまり満足していない」が42.5%と最も多く、夜間覚醒回数は1回が49.3%、2回が23.8%、3回以上は7.3%。HUSは平均4.53時間。中途覚醒のあとに再び眠るまでの時間は平均49.1±84.7分でした。平均睡眠時間は5.93±0.96時間。夜間頻尿の昼間活動への影響では「全くない」が55.4%と最も多く、「少しある」は22.1%でした。
これら10項目の質問と排尿回数の関連を調べたところ、排尿回数の増加は、HUSが短くなって総睡眠時間は短縮し、睡眠の質および昼間のQOL悪化と関連していました。
睡眠の質、夜間排尿回数、昼間のQOLを目的変数とした多変量解析の結果、夜間排尿回数の増加はHUSの短縮や夜間覚醒回数との強い関連が認められました。また、昼間のQOL低下は夜間多尿につながり、睡眠の質の低下が朝の目覚めのすっきり感を減少させることも示されました。
睡眠段階の出現率は若年者と高齢者で大きく異なり、最も深い眠りであるノンレム睡眠のステージ3(N3)は高齢者で減少します。脳波の解析結果から、加齢により睡眠時間は短縮し、中途覚醒の増加、徐波睡眠(深睡眠)の減少がみられます。徐波睡眠が中断されると、睡眠の質が低下しますので、HUSを確保することが重要です。ですから、夜間頻尿の治療選択では、このような年齢の変化を加味して行う必要があります。
われわれが高齢者を対象に行ったコホート研究で重回帰分析した結果、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)で評価した睡眠の質は、徐波睡眠時間および国際前立腺症状スコア(IPSS)と関係することが明らかになりました3)。
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