kissei

Basic Knowledge

「診療現場でよく耳にする言葉,きちんと説明するとなると,知っているようでよくわからない,
似ているようで違いがわからない」と思ったことはありませんか。本コラムでは,糖尿病診療の
現場で使われている用語とその考え方,最新の話題についてクイズ形式でご紹介します。

今回のテーマは,「肥満」です。

肥満

Q肥満に関する記述で正しいものを選んでください
(正解はひとつとはかぎりません)

  • 肥満の定義は世界共通である。
  • 肥満と肥満症は異なる。
  • 日本では,20歳以上で体格指数(BMI)25 kg/㎡以上の割合が男女とも有意に増加している。
  • 日本で保険適用されている肥満症の外科手術がある。

A 答え:2),4)が正解です。

~他の選択肢~

  • 肥満の定義は世界共通ではありません。世界保健機構(WHO)基準ではBMI 25 kg/㎡以上30 kg/㎡未満を過体重(overweight),30 kg/㎡以上を肥満(obesity)としています1)。一方,日本人では健康障害を発生するリスクが異なることから,『肥満症診療ガイドライン2022』2)では,脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で,BMI 25 kg/㎡以上を肥満の定義としています。さらに,肥満の原因が明らかな二次性肥満(内分泌性肥満,薬剤性肥満,遺伝性肥満,視床下部性肥満)を除外したうえで,BMI 35 kg/㎡以上を高度肥満としています。
  • 令和元年国民健康・栄養調査報告3)によると,BMI 25 kg/㎡以上の肥満者の割合(20歳以上)は,男性33.0%,女性22.3%です。男性は平成25年の28.6%に比べて有意な増加が認められましたが,女性では平成21年(2009年)からの10年間で有意な増減はみられませんでした。

解説

肥満と肥満症の違い

 肥満と肥満症は,健康障害や内臓脂肪蓄積の有無により違います。『肥満症診療ガイドライン2022』2)では,肥満をBMI 25 kg/㎡以上と定義し,そのうち,肥満に起因ないし関連して減量を要する健康障害がある場合,または内臓脂肪型肥満がある場合を肥満症としています。また,35 kg/㎡以上で健康障害がある場合は高度肥満症と区別されています。

 肥満症の診断に必要な健康障害には,1)耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常など),2)脂質異常症,3)高血圧,4)高尿酸血症・痛風,5)冠動脈疾患,6)脳梗塞・一過性脳虚血発作,7)非アルコール性脂肪性肝疾患,8)月経異常・女性不妊,9)閉塞性睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群,10)運動器疾患(変形性関節症:膝関節・股関節・手指関節,変形性脊椎症),11)肥満関連腎臓病があります。

 肥満によりインスリン抵抗性が増大するとインスリン分泌の増加につながり,分泌量の減少,枯渇に至ります。このインスリンの減少が糖尿病悪化につながるため,肥満糖尿病患者では体重管理が重要になります。

肥満症の外科手術

 肥満症の外科手術は胃を小さく形成することで,食欲を減退させるだけではなく消化管ホルモンの分泌動態が変化し,食欲やインスリン抵抗性およびインスリン分泌などの代謝に好影響を及ぼすことが報告されています。2型糖尿病など代謝関連疾患の寛解が認められることから,減量・代謝改善手術と呼ばれています。2021年には『日本人の肥満2型糖尿病患者に対する減量・代謝改善手術に関するコンセンサスステートメント』が日本肥満症治療学会,日本糖尿病学会,日本肥満学会3学会合同員会から公表されています4)

 日本では,腹腔鏡下スリーブ状胃切除術が減量・代謝改善手術として唯一保険収載されています。2022年4月以降,BMI 35 kg/㎡以上で糖尿病,高血圧,脂質異常症,閉塞性睡眠時無呼吸症候群のうち1つ以上,あるいはBMI 32.0~34.9 kg/㎡でも重症の糖尿病,高血圧,脂質異常症,閉塞性睡眠時無呼吸症候群を2つ以上合併する場合に保険適用になっています。

A

当社ウェブサイトでは、ご利用者の利便性向上と当社サービスの向上のためCookieを使用しています。また、当サイトの利用状況を把握するためにCookieを使用し、Google Analyticsと共有しています。Cookieによって個人情報を取得することはありません。Cookieの使用にご同意いただきますようお願いいたします。詳しくはこちら