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薬剤師のためのお役立ちcolumn

「この薬は飲みたくない」と患者さんに言われたら

患者さんが薬の服用をためらう理由はさまざまです。
薬剤師が患者さんの価値観や考え方を共有して寄り添い
治療の選択を支援する共同意思決定(SDM)について考えます。

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監 修坂口 眞弓 先生 みどり薬局[東京都台東区蔵前]

共同意思決定(Shared Decision Making:SDM)とは

「患者が、医療における意思決定の分岐点で、利用可能なすべての治療の選択肢を見渡し、専門家とのやり取りを通して意思決定を行うプロセス」のこと。SDMによって患者参加型医療を実現し、治療効果や患者満足度の高い状態を目指す。

患者さんの価値観や考え方、事情を共有する

「この薬は飲みたくない」と言われると、つい服薬の必要性や飲まなかった場合のリスクについて「指導」してしまいがちですが、それは患者さんの意向や感情をシャットアウトすることにつながります。服薬に納得していなければ黙って服用をやめてしまうこともあるため、「飲みたくない」という気持ちを受けとめた上で、まずはその理由を傾聴することが大切です。一方で、患者さんの意向や希望をすべて受け入れるのは適切ではありません。
 このようなときは患者さんの価値観や考え方を共有し、暮らし方や経済的なことも含めた事情にも一緒に向き合いながら治療の選択を支援する共同意思決定(Shared Decision Making:SDM)が力となります。

患者さんの気持ちに寄り添って傾聴する

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薬を飲みたくない理由としては、副作用がつらい・不快であることや、飲み続けることで今後副作用が現れるのではないかという不安のほか、剤型が飲みにくい、そもそも服薬が必要だと思っていない、あるいは経済的事情など、さまざまなことが考えられます。「飲みたくないとおっしゃるのはどのようなお気持ちからですか?」などと寄り添う姿勢で尋ね、もし副作用に関する不安が理由であれば、「以前に副作用で困ったことがあったのですか?」などと丁寧に掘り下げていきます。
 服薬したくない理由の中でも、副作用体験による不安や、副作用への漠然とした不安、そもそも服薬が必要だと思っていないといった場合は、そう思うようになったきっかけが、患者さんの価値観や考え方を理解する糸口になり得ます。

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情報を医師と共有し多職種で支援する

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患者さんの話から、主治医に伝えていない情報や、本人が望ましいと考えている選択肢を聞き取れた場合は、その内容を主治医と共有します。伝えて終わるのではなく、薬剤師と主治医が協議して最善と思われる着地点を探り、多職種が関わるかたちで患者さんの意思決定を支援することが理想です。
 患者さんが「この薬は飲みたくない」と訴えるのは、薬剤師への信頼があるからだともいえます。
 訴えを服薬の「拒否」ではなく「相談」と捉え、正直な思いを打ち明けてくれた患者さんの気持ちに応えるような態度を心がけることが大切です。最近はSNSなどの影響で誤った情報を信じ込んでいる場合もありますが、薬剤師との信頼関係が築かれていれば誤情報による不利益を受けにくくなります。

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参考
  • 調剤と情報(公益社団法人日本薬剤師会),じほう,2023年(Vol.29 No.12)
  • 厚生労働科学研究費補助金(がん対策推進総合研究事業)分担研究報告書,
  • “シェアード・ディシジョンメイキング(Shared Decision Making:SDM)の意義と可能性の検討”,中山健夫,2020年

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