高齢者は抗コリン薬を重複して服用していることが少なくありません。
抗コリン薬の副作用を疑う症状について患者さんから相談を受けたとき、
「日本版抗コリン薬リスクスケール」が薬剤の変更提案の根拠になります。
監 修坂口 眞弓 先生 みどり薬局[東京都台東区蔵前]
高齢者によく用いられる抗コリン薬のリスクを正確に評価し、薬物有害事象や相互作用を減らすことで患者さんの生活の質(QOL)を向上させることを目的に、一般社団法人日本老年薬学会が作成した(2024年5月)。日本で用いられる158種類の薬物を、最もリスクの高いスコア3からスコア1の3段階で評価している。スコア3が37薬物、スコア2が27薬物、スコア1が94薬物。
高齢者を主とするが、若年者でも基礎疾患によっては薬物有害事象の危険が高まることがあるため、年齢上の区分はない
薬剤師、医師・歯科医師、看護師やその他の医療介護専門職全般
各薬物が持つ抗コリン作用によるリスクの強さをスコア3〜1で評価する(数字が大きいほど高リスク)
複数の薬物が処方されている場合に各薬物のスコアを合算。薬物療法全体の抗コリン作用によるリスクを把握する
高いスコアの薬物を使用している場合はより低いスコアの薬物に切り替えるなど検討する
抗コリン薬の副作用は表のようにさまざまです。複数の薬剤を服用している高齢患者さんは薬剤起因性老年症候群のリスクが高くなりますが、その原因となる代表的な薬剤の1つが抗コリン薬なので、副作用を見落とさないようにしなくてはなりません。
便秘や口腔乾燥は、年のせいだとあきらめてしまう患者さんも少なくありません。また、尿が出にくいなどの症状は患者さん自身も気づきにくいものです。
「お通じが悪かったり、口が乾くということはありませんか?」「なんとなく尿が出にくいと感じたことはないですか?」と問いかけることで副作用の発現に気がつけることがあります。
「日本版抗コリン薬リスクスケール」(以下、リスクスケール)に基づき、服用中の各薬剤のスコアを合算した総抗コリン薬負荷は、服用期間が長くなるほどそのリスクが増加することが示されています。リスクスケールには、服用期間も含めて確認し、総抗コリン薬負荷を下げることが望ましいと書かれています。
あらかじめリスクの低い薬剤へ切り替えて副作用予防のために活用することはリスクスケールの理想的な活用方法ですが、実際には、治療上必要で服用しているので、リスクが高いからといって簡単に減らしたり止めたりできるものでもありません。まずは、患者さんに副作用が発現していることが分かった時に、リスクスケールを活用してリスクの少ない薬剤への切り替え提案ができると良いと考えています。
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