1. お役立ち情報
  2. キッセイ診療サポート

薬剤師のためのお役立ちcolumn

「日本版抗コリン薬リスクスケール」を活用した患者さんへの服薬指導「日本版抗コリン薬リスクスケール」を活用した患者さんへの服薬指導

抗コリン作用を持つ薬剤は幅広く、OTC医薬品にも多く含まれています。
「日本版抗コリン薬リスクスケール」を用いることで、
個々の薬剤のリスクだけでなく薬物療法全体のリスク評価もできます。

イラスト

監 修坂口 眞弓 先生 みどり薬局[東京都台東区蔵前]

「日本版抗コリン薬リスクスケール」とは

高齢者によく用いられる抗コリン薬のリスクを正確に評価し、薬物有害事象や相互作用を減らすことで患者さんの生活の質(QOL)を向上させることを目的に、一般社団法人日本老年薬学会が作成した(2024年5月)。日本で用いられる158種類の薬物を、最もリスクの高いスコア3からスコア1の3段階で評価している。スコア3が37薬物、スコア2が27薬物、スコア1が94薬物。

■ 対象

適用対象

高齢者を主とするが、若年者でも基礎疾患によっては薬物有害事象の危険が高まることがあるため、年齢上の区分はない

利用対象

薬剤師、医師・歯科医師、看護師やその他の医療介護専門職全般

■ 使い方

個々の薬剤のリスク評価

各薬物が持つ抗コリン作用によるリスクの強さをスコア3〜1で評価する(数字が大きいほど高リスク)

総合的なリスク評価(総抗コリン薬負荷)

複数の薬物が処方されている場合に各薬物のスコアを合算。薬物療法全体の抗コリン作用によるリスクを把握する

高いスコアの薬物を使用している場合はより低いスコアの薬物に切り替えるなど検討する

複数の薬剤によるリスクの増加に注意

複数の疾患を抱え、ポリファーマシー状態となっている高齢患者さんは増えています。抗コリン薬は多臓器・多疾患で幅広く使用されるため、多種類の薬剤を処方されていると、抗コリン薬が強弱交え複数含まれていることが多々あります。単剤では抗コリン作用が弱くても、複数の薬剤の累積が薬物有害事象の発現につながる恐れがあるため注意が必要です。
 薬剤師はどのようにリスク評価をしたらよいでしょうか。ここで活用したいのが「日本版抗コリン薬リスクスケール」(以下、リスクスケール)です。各薬剤のリスクスコアを確認しておくことで、有害事象が起きた場合の判断の一助とすることができます。

盲点になりやすい薬剤とは

リスクスケールに掲載された薬剤を見てみると、薬効群中分類でムスカリン受容体拮抗薬(抗コリン薬)とされているものもありますが、そうではないものがほとんどです。抗精神病薬や抗うつ薬が意外と多く、このほかにアレルギー疾患治療薬なども盲点になりやすいのではないでしょうか。
 そして、もう一つはOTC医薬品です。例えば、スコア3とされているクロルフェニラミンやベラドンナは非常に多くの総合感冒薬や鼻炎薬に含まれています。OTC医薬品は、調剤薬局とは別の店舗などで購入する患者さんも多く、おくすり手帳に記録をされない場合も多いため特に盲点になりやすいと考えられます。

Case Study

イラスト
  • 70代男性
  • 心療内科で薬物治療中(薬剤A・薬剤B/有害事象なし)
  • 今回は花粉症症状と胃痛があり、一般内科から処方された薬剤(薬剤C ・薬剤D)を取りに来局した

STEP.1

総合的なリスク評価(総抗コリン薬負荷の確認)を行う。
今回、総抗コリン薬負荷が大きくなり、副作用が発現するリスクが高いと判断。
イラスト

STEP.2

イラスト
抗コリン薬の代表的な副作用を改めて説明し、「何かあったらすぐに相談してくださいね」と伝える。
もしOTC医薬品を服用する機会がある場合は、OTC医薬品の服用をきっかけに副作用が症状として出る場合があることも情報提供をする。
リスクスケールを活用することで、患者さんごとに抱えるリスクを定量的に評価することができ、有害事象が発現した時の速やかな対処につなげることができます。
参考
  • 日本版抗コリン薬リスクスケール 第2版,一般社団法人日本老年薬学会

当社ウェブサイトでは、ご利用者の利便性向上と当社サービスの向上のためCookieを使用しています。また、当サイトの利用状況を把握するためにCookieを使用し、Google Analyticsと共有しています。Cookieによって個人情報を取得することはありません。Cookieの使用にご同意いただきますようお願いいたします。詳しくはこちら