今回は家族の付き添いや介護が必要な高齢の患者さんや
在宅医療を受けている患者さんの家族との
コミュニケーションについて考えます。
監 修坂口 眞弓 先生 みどり薬局[東京都台東区蔵前]
高齢の患者さんなどでは、受診に家族が付き添い、薬局へ処方箋を持ってきて薬を受け取るのも家族ということがあります。その場合、薬の説明や服薬の確認は家族に行うため、家族との円滑なコミュニケーションが不可欠となります。
受診の付き添いや薬の管理、介護を行う家族の負担は想像に難くありません。疾患で辛い思いをしている患者さんを日々目にしていたり、患者さんの弱音や愚痴を受け止めてあげたり、心労が絶えないことが想定されます。「お薬のことでも何でも、困っていることなどはないですか?」などと、優しく声をかけると、「実は……」「それがね……」と、話してくれることも少なくありません。それがどのような内容であっても共感的な態度で受け止め、困り事や不安、疑問に寄り添います。「この人は話を聞いてくれる」「分かろうとしてくれている」と思ってもらえることが、信頼関係構築の第一歩となります。
一方、仕事をしていたり子育て中であったりと、忙しそうな家族とゆっくりコミュニケーションをとることは難しいと感じることがあるかもしれません。そのようなときは無理にいろいろ聞くことはせず、「いつもご苦労様です。お薬のことでも何でも、困ったことがあったらいつでもご相談くださいね」などと、相手の顔を見て笑顔で声をかけます。そのような言葉が、「次に行ったときに聞いてみよう」という気持ちを呼び起こすこともあります。
ニーズの多様化に対応するため、メールやスマホの通信アプリを連絡ツールとして活用し、サポート体制の充実を図っている薬局もあります。
患者家族は「第2の患者」ともいわれます。患者さんを支える家族の心身の健康も守るという気持ちでコミュニケーションを図ることが重要です。
とくに高齢者は服用している薬の種類が多く、服用自体が負担になっている場合や、家族が「こんなにたくさんの薬が本当に必要なのだろうか」などと不安を感じている場合もあります。薬の説明を終えたあとに、「◯◯さん(患者さんの名前)の最近のご様子はいかがですか? お薬のことで困っていることはないですか?」「それぞれのお薬について、気になることやご不明な点はありませんか?」などと、優しく声をかけると、家族も相談がしやすくなります。
剤形の変更や一包化など比較的対応しやすいものは、なるべく早く対応することで信頼感が増します。解決が難しそうな内容でも、対話を重ね、掘り下げていくと、家族の安心につながる対策が見つかったり、今後の対応に役立てたりすることができます。
患者さんの服薬アドヒアランスを高めるためには薬剤師と患者さんを仲介する家族に、なぜ服薬が必要なのかを十分に理解してもらうことが必要不可欠です。コミュニケーションを通して、治療方針や薬に対する理解度、治療に求めていることなどを把握し、それに応じた情報提供を行って信頼関係を構築していきます。家族に服薬の必要性を理解してもらうことが、患者さん自身の納得や積極的な服薬につながり、「患者協働」の医療が実現します。
患者さんの情報を家族と共有することは大切ですが、患者さんから得た情報、例えば「本当は△△したい」「□□と思っている」といったことを家族に伝える場合は、「ご家族にもお伝えしてよいですか?」と許可をとります。家族の考えなどを患者さんに伝える場合も同様です。守秘義務はもちろんのこと、患者さんと家族の関係にも配慮した言動を心がけます。
質の高い在宅医療提供の鍵は医療・介護職の連携であり、そのために最も重要なことの一つが情報共有です。患者さんや家族から聞き取ったことを医師や訪問看護師、そのほかの職種と共有し、患者さんと家族に個別的なよりよい在宅医療をチームでつくり上げていきます。また、家族の中の「キーパーソン」(患者さんの代わりに意思決定するなど重要な役割を果たす人)を把握し、その人と十分なコミュニケーションをとることも大切です。キーパーソンと良好な関係が築けないと、薬剤師として患者さんに伝えたいことが上手く伝わらないこともあります。誰がキーパーソンかという情報は、ケアマネジャーから得ることができます。
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