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薬剤師のためのお役立ちcolumn

服薬の動機を高める「共感的励まし」

患者さんの服薬の動機を高め維持していくためには
どのような心がけや声かけが必要でしょうか。
薬剤師による「共感的励まし」について考えます。

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監 修坂口 眞弓 先生 みどり薬局[東京都台東区蔵前]

「共感的励まし」とは

患者さんとの対話の最後に、共感的な雰囲気の中で心に生まれた励ましの言葉をかけることが「共感的励まし」です。自然にわき上がってきた正直な言葉は相手の心に響き、患者さんを力づけたり、治療や服薬の動機を高めたりする効果があるとされています。

患者さん個々の“服薬の動機”と“服薬の負担”を把握する

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患者さんには、「早く治したい」「そのためにきちんと服薬しなくてはいけない」などの“服薬の動機”がある一方で、「副作用が心配」「複数の薬剤を毎日忘れないように服薬するのは大変」「服薬しにくい」などの“服薬の負担”も存在し、両者は患者さんの心の中で天秤にかけられています。服薬の動機が負担よりも大きければ、服薬アドヒアランスは向上しますが、負担の方が大きいと低下します。
 服薬指導の際にはこのことを意識しながら、対話の中で患者さん個々の服薬の動機と負担を把握し、服薬の動機を高めて負担を軽くするような言葉かけや提案をすることが大切です。

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共感を示し、心に生まれた励ましの言葉をかける

生活習慣病などの薬剤は長期的に服薬アドヒアランスを維持していくことが求められています。例えば、糖尿病治療薬を処方されている患者さんが、「この頃はちゃんと薬を飲んでいるよ」と言ったとします。これをきっかけにコミュニケーションを深めていくと、動機づけとなっている理由を話してくれる可能性があります。
 例えば、「孫が生まれ、かわいくて仕方ない」「一日でも長く孫の成長を見守りたい」ということを教えてくれたようなときに、「目標ができてよかった」「お孫さんと楽しく過ごしてほしい」「応援したい」などの想いがわき上がったとします。
 まずは、「○○さん、お孫さんの誕生、おめでとうございます。これからますます楽しみが増えますね」などと共感を示す言葉をかけ、最後に、「目標があると治療にもよい影響を与えると思いますよ」「長生きしてお孫さんと楽しい時間をたくさん過ごせるように、私も応援しています」と、想いをそのまま言葉にします。
 このような「共感的励まし」は、治療や服薬の動機を高め維持するのに役立ちます。

患者さんの想いを知るための土台は信頼関係

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より効果的な「共感的励まし」を行うためには、患者さんの日常生活を想像してみるなど関心を持ち、好きなことや生きがいを共有してもらえるような関係性を構築することが大切です。
 例えば、おしゃれが好きだった高齢の女性患者さんがリハビリテーションを頑張っているとします。「以前のようにショッピングを楽しみたいからかな」と想像しながらコミュニケーションを深めていくと、実は「友達と旅行に行きたくて頑張っている」ということが一番の動機づけとなっていることを知れるかもしれません。
 患者さんは旅行を目標としているということが分かれば、その話題を交えて言葉をかけることができ、患者さんの心にもより響きやすくなります。患者さんが“想い”を打ち明けてくれるような信頼関係を築くことは、効果的な「共感的励まし」をする上で最も大切な土台となります。

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実践!患者協働

患者協働(Patient Engagement)は、医療従事者が患者さんや家族などの協力や参画を得ることをいいます。患者協働により患者さん中心の医療の実践がなされることに加え、医療の質や患者さんの安全性に関する様々な効果があると近年注目されています。
 「プライマリケアにおける患者・家族との協働による患者安全改善ガイド」(医療の質・安全学会)では、患者さんや家族を参画させるためのエビデンスに基づいた4つの戦略が紹介されています。
 その一つに「教え返す(Teach-Back)」というものがあります。服薬アドヒアランス不良の患者さんでは、理由は色々ありますが、中には医療従事者が十分に説明したつもりでも、忘れてしまったり、理解に誤りがあったりしていることが一因となっている場合があります。このようなケースで有効なのが、「教え返す(Teach-Back)」です。これは、医療従事者が説明した内容を、“患者さん自身の言葉”で説明してもらうこと。聞いたことを単に繰り返すのではなく“自分の言葉”で説明できるかどうかがポイントです。患者さんが「知っておくべきこと、行うべきこと」を、明確に理解しているか確かめることは、アドヒアランス向上のためにとても重要です。

参考
  • ・実践 ファーマシューティカルコミュニケーション(井手口直子監修・執筆,日経ドラッグインフォメーション編,日経BP社,2008年)
  • ・スキルアップ 患者協働(一般社団法人日本プライマリ・ケア連合学会)
  • ・プライマリケアにおける患者・家族との協働による患者安全改善ガイド(医療の質・安全学会)

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