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薬剤師のためのお役立ちcolumn

加齢性難聴の患者さんとのコミュニケーション

加齢による聴力の低下は40代から始まりますが、自覚するのは60代くらいから。
65〜74歳では3人に1人、75歳以上では約半数が難聴で悩んでいるといわれます。
加齢性難聴の患者さんとのコミュニケーションについて考えます。

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監 修坂口 眞弓 先生 みどり薬局[東京都台東区蔵前]

コミュニケーションのポイント

  • やや大きめ、やや低めの声で話す
  • ゆっくり、単語ごとに、語頭(単語の最初の一音)をはっきりと発音する
  • 聞き間違いやすい言葉は言いかえる
  • 耳元で話すのではなく、正面を向いて話す
○なにか・こまっていることは・ありまあせんか?×な・に・か、こ・まっ・て…

加齢性難聴の特徴は、まず小さな音が聞こえにくくなります。そして、高音域の音から聞こえにくくなります。これらは両側でほぼ同程度に起こります。言葉の聞き取り能力である語音明瞭度が低下するため、大きな声であっても内容が聞き取れない、声が大き過ぎるとかえって聞き取れないということもあります。加齢性難聴の患者さんに対応する場合は、やや大きめ、やや低めの声で話します

高音域の聴力が低下すると、無声子音が聞き取れなくなります。無声子音は、カ行、サ行、タ行、ハ行、パ行です。
 ゆっくりと、単語ごとに区切って、とくに語頭(単語の最初の一音)をはっきりと発音します。「なにか・こまっていることは・ありませんか?」という感じです。「な・に・か、こ・まっ・て……」という話し方は聞き取りにくいので避けます。名前を呼ぶときも、語頭を意識します。

○なにか・こまっていることは・ありまあせんか?×な・に・か、こ・まっ・て…

聞き間違いやすい言葉は言いかえます。例えば、「7時」と伝えたい時、「しちじ」ではなく「ななじ」「じゅうくじ」と言った方が聞き取りやすくなります。

○ななじ×しちじ○じゅうくじ

顔が見える位置で視線を合わせ、「これから話しかけますよ」と、聞く準備を促すことも大切です。身振りや手振りも患者さんにとってヒントになるので、耳元で話すのではなく、程よい距離感で正面を向いて話します。このことは補聴器を装用している患者さんにおいても同様です。

○ななじ×しちじ○じゅうくじ
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口元を見せながら、口を大きく開いて話すことも効果的ですが、医療従事者は感染症予防のためマスクを外すことは難しいです。マスクを着用していても実践できるポイントを理解しておくと、加齢性難聴の患者さんとのコミュニケーションが取りやすくなります。

患者さんの「聞こえ」を支援することの大切さ

難聴は、コミュニケーション障害の原因となり、社会的孤立やうつを引き起こす要因となり得ます。認知症発症のリスク要因としても注目されるようになっています。

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難聴が進行して生活上の支障が生じるようになれば、補聴器を装用することが大切です。健康相談や服薬指導の会話の中で、“聞きまちがいや聞きなおしが多い”と感じることがあれば、難聴のために困っていることなどを聞き取った上で、耳鼻咽喉科へ相談してみることを提案します。一般社団法人日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会認定の補聴器相談医名簿(医師名に加えて所属医療機関名・住所・電話番号も記載あり)が学会のホームページで公開されており、都道府県別にダウンロードすることもできます。受診医療機関を悩まれている患者さんにはこちらの情報も合わせて提供できると理想的です。

聞こえないために何度も聞き返すことは、患者さんにとって大きなストレスです。忙しいのに申し訳ないという気持ちも手伝って聞こえたふりをしてしまうと、大切な情報が届かず、健康状態に悪影響を与える可能性もあります。安全な薬物療法のためにも、社会的孤立や認知症発症を予防するためにも、患者さんの「聞こえ」を支援することが大切です。

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参考
  • ・日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会:Hear well, Enjoy life
  • ・日本老年医学会雑誌:57(4)397-404,2020
  • ・日本老年療法学会誌:1 1-7,2022
  • ・「聞こえにくい」をほっとかない:小川 郁,日本看護協会出版会,2020

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