いつも足が冷えて辛い、足が冷えて眠れない…など、
足の冷えは女性に多いとされていますが、最近は男性にもみられます。
生活習慣を見直すことで改善する可能性が高い足の冷えについて考えます。
監 修坂口 眞弓 先生 みどり薬局[東京都台東区蔵前]
“冷え性”は、冷えやすい体質を表す言葉です。四肢末端型や内臓型などのタイプがありますが、中でも足の冷えはよく見られる不調のひとつです。
原因は、筋肉量の減少や栄養不足、運動不足、自律神経の乱れなどによって血流が悪くなることです。自律神経は、ストレス、不規則な生活、ホルモンバランスの変化など様々な要因により影響を受けます。
女性に多い理由には、男性と比べて筋肉量が少ないことやダイエットによる更なる筋肉量の減少、閉経に伴うホルモンバランスの変化などが挙げられます。首・手首・足首といった冷えやすい部分の露出、締め付けの強い下着の着用なども血流を悪くする原因です。
最近は男性にも増えています。その理由には、喫煙、運動不足、ストレスなどが挙げられます。
足の冷えを改善する第一歩は、冷えを生む原因に気づき、それを取り除くことです。たんぱく質を十分に含むバランスのよい食事を摂ること、冷たい飲み物などを避けること、運動により筋肉量を増やすこと、規則正しい生活で自律神経を整えること、ストレスの上手な発散が基本です。
「足が冷えて辛い」という患者さんに対して、「お仕事忙しいですか?」「何かに悩んでストレスがたまっているということはありませんか?」「バランスよくごはんを食べていますか?」などと声かけをし、改善できるポイントを一緒に見つけたり、ストレスを発散する一助となれるとよいと考えます。
「足が冷えて眠れない」という患者さんに対して、具体的にはどのようなアドバイスがよいでしょうか。
湯船に浸かることは血流改善の効果があります。肩まで浸かる「全身浴」がよく、湯温は交感神経から副交感神経優位に切り替わるとされる39℃以下。40℃以上だと交感神経が優位になります。体温が1℃上昇した目安となる「うっすら汗をかくくらい」まで浸かると、冷えの改善に効果的です。全身浴で心臓への負担を感じる人には、「手浴」や「足浴」をすすめます。湯温は心地よいと感じる程度です。半身浴は首や肩、背中が冷えるため避けます。
上がった深部体温は入浴後1〜2時間で下がるので、そのタイミングで就寝すると睡眠の質もよくなります。
就寝までに足が冷えるのを防ぐために靴下を履くことも大切です。ただし、就寝中は足裏の放熱や汗の蒸散を妨げないレッグウォーマーが足の冷え対策によいとされています。湯たんぽなどの使用も効果があります。
入浴後~就寝前 靴下
就寝中 レッグウォーマー
夜間足が冷えると訴える患者さんに対しては、入浴方法(シャワーのみで済ませていないかどうか、湯温や時間)、入浴後~布団に入るまでの時間、入浴後~就寝前と就寝中の靴下の着用有無について聞き取り、できそうな改善策からひとつひとつ試みてもらうようにします。もし薬剤師自身が冷え性なら、自分が試してみて効果を実感できたものについて体験を交え伝えると、患者さんのモチベーションアップにつながります。
「冷え症外来」の医師が教える冷えとり習慣(林 忍,イースト・プレス,2023年)
「下肢の冷感が症状として出現する疾患には、動脈硬化が進むことにより起こる下肢閉塞性動脈硬化症、末梢血管に炎症性の閉塞が生じるバージャー病などがあります。下肢閉塞性動脈硬化症は、年齢、喫煙、高血圧、糖尿病、脂質異常症、脳心血管疾患合併が発症の主要リスクです。バージャー病は、国内の患者数が約7,000人(2014年特定疾患受給者数)で、男女比は9:1。喫煙歴のある20〜40代で好発することが特徴です。
2022年改訂版 末梢動脈疾患ガイドライン(日本循環器学会,日本血管外科学会)
血管炎症候群の診療ガイドライン(2017年改訂版)(日本循環器学会ほか)
冷えを感じるだけではなく、しびれがある・痛みがあるという場合には、医師に相談することをすすめます。薬剤師の気づきが早期の診断・治療につながれば、患者さんの健康の維持向上に大きく貢献できます。
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